隊列走行に期待と不安

トラック隊列走行の公道での実証実験が当初計画より前倒しされる。

隊列走行とは、本紙でもたびたびお伝えしているように、先頭車両にはドライバーが乗務し、そのドライバーが手動で運転する車両の後ろを無人の後続車両が追随する構想だ。

政府は、2017年度にテストコースで安全性を検証したうえで、実際の高速道路でまず2台編成の走行実験を行う。

追随技術は、すでに実用化されているACCと呼ばれるセンシング技術に車車間通信を加えたCACCだ。後続車両が先頭車両と通信することで、後続車両の各種センサーやカメラが前方車両の変化を捉える前に、過減速の情報を得て、より素早く加速したり、減速することを可能にする。

隊列走行では、他の車両に割り込まれない車間距離(4~10㍍程度)を保つ必要があり、CACCの技術が必要となる。実証実験では、これらの技術の信頼性を検証することになる。

課題として残るのは、合流と車線変更だ。隊列は先頭車両を含めて計4台程度とすることをめざしているが、大型車が4台の隊列を組めば100㍍ほどになり、合流や車線変更には困難が伴う。

例えば隊列が左側走行車線を走行中に、前方に故障車両などの障害物がある場合、追い越し車線に車線変更する必要があるが、先頭車両を手動運転するドライバーが100㍍後方の安全性を確認して車線変更を行うことは困難だ。高速道路本線への合流時にも同様の課題がある。

車線変更を行う場合、隊列最後尾の無人車両から先に車線変更していくことも考えられるが、そうした技術はまだ開発されていない。

隊列走行への期待が高まる物流業界では、複数の物流企業が各社の幹線輸送用の大型車を連結するオープンなサービスとすることを求めており、隊列を形成・分離するための専用スペースが必要となるため、インフラ面の検討を政府に求めている。

宅配大手のヤマト運輸では、17年から公道での実証実験を開始し、早ければ22年には東名大の幹線区間での事業化を要望している。

同社では将来的に、大型車1台に満たない貨物や、長距離輸送用車両を持たない企業がロールボックスパレット単位などで隊列形成拠点に荷物を持ち込み、大型車を仕立てて隊列に組み混むことも想定。さらに、荷物の積み降ろしも自動化し、物流全体を効率化する絵を描いている。

ドライバー不足の切り札とも目される隊列走行だが、期待と不安が渦巻いている。