運輸・倉庫2カ月ぶり悪化、TDB8月景気動向調査
進まぬ価格転嫁、仕入れDI今年最高
帝国データバンク(TDB)が5日発表した8月の景気動向調査によると、運輸・倉庫業界の景気DIは前月比0・2ポイント減の43・3、うち一般貨物自動車運送業は0・6ポイント減の39・7とともに2カ月ぶりに悪化した。エネルギー価格の上昇や台風による人流・物流の停滞もマイナス要因となった。荷動きはプラス材料も聞かれるが、燃料高で価格転嫁が進まない状況へ懸念が強まる。全体の景気DIも前月比0・3ポイント減の44・9と2カ月ぶりに悪化。本格的な夏シーズンを迎え各地で盛り上がりをみせたが、台風の上陸で交通網が寸断され、帰省や旅行などを含めヒト・モノの移動の混乱が下押し要因となった。生活必需品の価格上昇やエネルギー価格の高騰も影響した。一方、半導体供給不足の緩和は自動車生産などで好材料となった。今後の国内景気は、好材料と悪材料が混在するなかで、概ね横ばい傾向で推移するとみる。運輸・倉庫業界の各指標はグラフの通り。販売単価DIが57・7と前月(57・2)を上回るが、仕入単価DIが71・7(前月69・0)と3カ月連続で上昇、今年で最も高い水準となった。雇用過不足DIは正社員63・9(前月63・8)、非正社員58・5(前月58・1)と人手不足感も強まっている。一般貨物自動車運送業の先行き見通しDIについて、TDBでは「少しずつ改善する方向だが、他業種と比べると厳しく見ている傾向。インバウンドで中国の規制が緩和されると取引先の景気回復につながりプラスの影響を及ぼすと見込まれる。一方で24年問題への対処はあまり進んでいない様子もうかがえる」としている。貨物関係の事業者からは「人件費や燃料など値上がりに対する運賃への転嫁を認めてもらえない。労働時間短縮も迫られ、運転手などの募集もままならない」(一般貨物自動車運送)、「エネルギー価格の高騰、最低賃金の大幅増などコストが先行して上昇し、中小企業の価格への転嫁がなかなか進まない」(運輸に付帯するサービス)など依然厳しい声が聞かれる。「海外からの需要が増加」(こん包)、「自動車関連が復調」(普通倉庫)など荷動きはプラス材料も聞かれるが、見通しでは「物価高で物流量が減少。値上げが順調に行えていない」(集配利用運送)、「物価の落ち着き、価格転嫁が進まないと回復は難しい」(一般貨物自動車運送)など指摘される。TDB調査による運輸・倉庫業界の景気DI見通しは、3カ月後46・1、6カ月後46・3、1年後47・8となっている。