「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」が初会合
脱炭素化の追い風で特性発揮を
国土交通省は、貨物鉄道の特性を発揮する政策の方向性について議論する「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」を立ち上げ、17日に初会合を開いた。貨物鉄道の改善、他モードとの連携、社会・荷主との関係の3つの視点から議論する。関係業界のヒアリング、意見交換を行い今夏までに内容を取りまとめ、概算要求などに反映させる。深刻なドライバー不足や2050年カーボンニュートラル実現への対応など、貨物鉄道が重要な輸送モードとして、特性を十分に活かした役割を発揮する政策のあり方を議論する。積極的に取扱輸送量の拡大を目指すことで、課題解決につながる方策を国の支援も含め検討する。冒頭に挨拶した石原大大臣官房審議官は「貨物鉄道をいかに物流に活用するかは古くて新しい課題。9年前にビジョンを策定、方向性を示したが現実に輸送量は増えていない。大きなフォローの風が吹く今、この機会に建設的な意見をいただきたい」と求めた。検討会は有識者、関係団体、鉄道事業者、関係省庁の各委員で構成、座長の根本敏則敬愛大学経済学部教授は「脱炭素化へ鉄道貨物を活用する議論はもっともだが、これまでの議論、理屈だけでなく新しい論理も必要」とし、2030年を目標とした計画を立てる考えを示した。貨物鉄道輸送は1編成の輸送力が最大650tと10tトラック65台分、ドライバー65人分の輸送力でCO2排出量はトラックの約13分の1。モーダルシフトに関する指標として、物流施策大綱では19 年度184億トンキロの鉄道貨物輸送を25 年度209億トンキロに、地球温暖化対策計画では13 年度193・4億トンキロを30年度256・4億トンキロなど掲げている。議論する3つの視点のうち、貨物鉄道の改善では、需要が見込まれる輸送品の取り込みを増やす方策や災害時対応、一層の環境優位性を発揮する方策、新幹線を活用した物流の今後の方向性などを具体例に示した。他モードとの連携ではトラックとシームレスに利用できる方策や、物流DXを目指す中で貨物鉄道の役割など議論する。これらを前提にリードタイムよりも環境問題を重視する機運を醸成した貨物鉄道の利用促進や、荷主が鉄道物流を利用するインセンティブなども検討する。初会合では鉄道局が取り巻く現状を、JR貨物の犬飼新取締役兼常務執行役員経営統括本部長が貨物鉄道のサービス向上・利用促進に向けた同社の課題と取り組みについて説明した後、各委員がコメントした。標準コンテナの普及やパレット化、災害対応など課題のほか貨物新幹線への期待など広範な意見、問題提起があった。会合は計6回を予定、今後、通運会社、荷主、物流不動産関係など各ヒアリングし5回目で取りまとめ骨子案を提示する。