「自動物流道路」検討会が初会合

夏にルート設定・中間まとめ

国土交通省は、物流危機への対応や温室効果ガス削減に向けて、新たな物流形態として、道路空間をフル活用した「自動物流道路」の構築に向けた検討を進める。「自動物流道路に関する検討会」を設置し、21日に初会合を行った。政府は10年で実現する方針を示しており、今後、関係者へのヒアリングや論点を議論、夏頃には想定ルートの選定を含め、中間取りまとめを行う。社整審国土幹線道路部会における、高規格道路ネットワークのあり方に関する昨年10月の中間とりまとめに「自動物流道路」の構築が盛り込まれ、有識者、関係団体、関係省庁からなる検討会を設置した。初会合では検討の背景、海外の検討事例、今後の方向性について議論した。冒頭、丹羽克彦道路局長は「物流危機対応への1つの手段として道路空間を活用した自動物流道路の構想が提言された。10年で実現する野心的な目標を掲げ、切迫した物流危機への対応にスピード感もって実現したい」との考えを示した。検討会委員長の羽藤英二東京大学大学院教授は「自動倉庫という新しい技術が道路交通の中に登場してきた。中国、スイス、アメリカなど進んでいる情報も含め現実的な方法論で議論していきたい」と述べた。道路局によると、道路空間を活用した人手によらない新たな物流システムとして、自動物流道路(オートフロー・ロード)の実現を目指す。実証段階の自動運転トラックとは別に、高速道路の中央分離帯や路肩、あるいは地下に専用空間を作り、自動運転カートを走行させるイメージ。想定ルートは物流需要の多い幹線輸送のほか、都市間輸送では高速道に限らず柔軟に検討していく考え。議論する項目に①30年・50年後の物流の目指すべき姿、②自動物流道路による社会やロジスティクスの変革、③使いやすく、役に立つ自動物流道路に必要な点④産官学の連携――を提示。中間とりまとめの後も運用に向けハード、ソフト両面で検討を継続する。海外の事例としてスイスで計画中の地下トンネルに自動運転カートを走行させる物流システムや、イギリスで計画中の、低コストリニアモーターを使用した完全自動運転による物流システムを紹介した。委員からは、「EC需要が増加する中で自動物流道路は必須の手段」、「標準化、情報化、商習慣など物流の在り方を大きく変える可能性がある」、「モーダルシフトで新たなモードの1つになる」など物流の観点のほか、「しっかりとサプライチェーン、物流網を日本として確保する」など国土形成の観点からも前向きな意見が聞かれた。