圧入作業データを改ざん JR貨物

564両に関与し運用停止

日本貨物鉄道(JR貨物・犬飼新社長)は10日、自社の輪西(北海道支社)、川崎(関東支社)、広島(関西支社)の3車両所で、輪軸組立作業時に不正行為を行っていたことが判明。国土交通省で緊急会見を開いた。車軸に車輪をはめ込む圧入作業で、規定を上回る圧入力をかけたにも関わらず、上限値のデータを記録し作業を終えていた。該当車両は、機関車を含む564両に上り、その後の調査で、さらに貨車300両が該当の可能性が高いことから11日、全列車運行を止め検査を行い、順次再開した。改ざんは、8年前から行われていた可能性が高く、先の新山口駅構内での機関車脱線事故との因果関係が注目される。7月24日、山陽線・新山口駅構内で発生した機関車脱線事故を発端に、車軸の亀裂が確認されたため、確認をしていた。今月6日には、関西支社広島車両所において、組み立て作業の確認を行っていたところ、社員からの申告により、圧入力が基準値を超過した場合に、上限基準値内のデータを差し替えて作業を終了していたことが判明。その後の調査で、他の車両所についても同様な作業工程で進められたことが分かった。該当車両は、機関車4両を含む564両で、うち私有貨車(タンク車)26両が含まれ、機関車のうち1両が先の脱線車両に該当している。西田茂樹車両部長は、「圧入力の上下限値で、下限に対する意識は高いものの、上限値では多少の超過に対し認識が甘かったのではないか」と振り返り、適正な作業教育を徹底していくと述べた。

全列車の運行を抑止 省の特別監査で立入
11日、その後の調査で貨車300両が新たに確認できていなかったことが判明し、自社の判断として該当車両の可能性があることから、全列車の運行を止めた。移動測定器などを使い、車軸のチェックを行い、安全が確認できた列車から順次再開した。併せて同日、3車両所に対し、国交省の特別保安監査が入り、安全管理体制などを調査、行政処分や指導などが見込まれる。報告を受け五十嵐徹人国交省鉄道局長は、「このような不正行為は、鉄道輸送の安全確保の仕組みを根底から覆す行為であり、極めて遺憾。また運行停止は、期待される鉄道貨物に対する信頼を損なうもの。特別保安監査の結果を踏まえ、厳正に対処していく」とコメントした。11日の定例社長会見で犬飼社長は、「お客様を始め関係者の信頼を損ねることとなり、深くお詫びする。この事象を重く受け止め、チェック体制を強化し、教育の強化、コンプライアンスのさらなる徹底に努めていく」と謝罪した。当初の該当車両が保有台数の1割に上ることから、輸送力への影響は10%/日程度減少すると同社はみていた。しかし、列車抑止を行った影響で、宅配便など1日程度の遅延が発生した。今後は、列車の積載効率高め、顧客に対し休日運行へのシフトを依頼していく。また、脱線事故を起こした機関車が該当車両に含まれていることで、脱線との因果関係が問われるところだが、現段階では運輸安全委員会の調査を待つことで明言を控えている。

謝罪する犬飼社長(左)と高橋ロジスティクス本部副本部長(11日、本社で)