運輸・倉庫の転嫁率28%、TDB調査

改善も依然2割台

帝国データバンク(TDB)が発表した価格転嫁に関する実態調査(2月実施)によると、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す価格転嫁率は全体で40・6%(前回23年7月調査43・6%/前々回22年12月調査39・2%)、運輸・倉庫業は27・8%(同26・2%/20・0%)だった。価格転嫁率40・6%はコストが100円上昇した場合に40・6円しか販売価格に反映できず、残りの約6割を企業が負担することを示す。全体では前回調査より3・0ポイント後退した。
運輸・倉庫業は改善を示し、価格転嫁の進展はみられるものの依然として2割台。企業からは「荷主からの二次請け三次請けが普通であり、荷主に対し直接値上げ交渉ができない」といった声が寄せられている。全体と運輸・倉庫業の転嫁状況は表の通り。「多少なりとも価格転嫁できている」企業はともに7割超で、運輸・倉庫業は「全く転嫁できない」が前回調査より改善しているが、転嫁できた割合が低く価格転嫁率で依然として全体と開きがある。運輸・倉庫業のうち一般貨物自動車運送業の価格転嫁率は25・4%(前回23・1%、前々回18・6%)とこちらも改善しているが依然低水準である。業種別の価格転嫁率は、「化学品卸売」(62・4%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(60・6%)などで6割を超えた。他方、低い業種では「医療・福祉・保健衛生」(13・0%)や、「娯楽サービス」(17・1%)、「金融」(18・2%)などで2割を下回った。サプライチェーン別に価格転嫁の動向をみると、前回調査と比較して、川上・川下業種を問わず価格転嫁率は後退している。なかでも卸売と比較し製造や小売は価格転嫁が進まず厳しい状況がうかがえる。TDBでは「価格転嫁への理解は醸成されつつあるが、原材料価格の高止まりや他社への説明が難しい人件費の高騰などに対し、取引企業との関係上これまで以上に転嫁が難しい」と分析。さらに「これ以上の価格転嫁を進めると、消費者の購買力の低下で景気の低迷につながることも危惧される。人件費など目に見えにくい単価の上昇分を、いかに見える化して説明するかへと価格転嫁のステージが変わってきた」とみている。