過労死防止へ着荷主アプローチ

改善基準告示見直し議論

改善基準告示の見直しを議論する、労政審自動車運転者労働時間等専門委員会トラック部会の第5回会合が19日に開かれ、焦点の1つである荷主都合、商習慣に関して、厚労省監督課から着荷主に対するアプローチを検討している考えが示された。労使主張はこれまでと変わらないが、使用者側からは「着荷主へものを申すのは難しい中で何らかの働き掛けができれば、各見直し項目を改めて考えたい」など議論も一定の前進を見せた。改正改善基準告示(2024年4月施行)は22年12月頃の告示公布へ検討が進められ、タクシー、バスは検討結果が先の中間取りまとめに盛り込まれ、トラックもこれを参考に議論、今夏までに取りまとめる。同日の会合では事務局から修正案の提示はなく、各項目で引き続き労使と公益各委員が意見を交わした。過労死防止が見直しの背景にあり、改めて事務局が脳・心臓疾患の労災について、道路貨物運送業、貨物自動車運転者が請求件数、支給決定件数とも最多で、支給決定件数と雇用者数の対比で道路貨物運送業は全産業の9倍など実態が示された。公益委員からは「データによると休息8時間の現行水準では半分が5時間未満しか睡眠がとれず過労死リスクが高まる。商慣習が変わるまで待つことができるのか」と指摘があり、藤村博之部会長は「改善基準告示をしっかり変え、長時間労働にならないよう、外枠をはめれば商習慣も変わらざるを得ないのではないか」と見解を述べた。
荷主都合の議論に関して、監督課から関係省庁に荷主団体も交えた中央・地方協議会の枠組みによる取り組みの一方、とくに着荷主は難しい課題と認識し、個別荷主へのアプローチを検討中であるとの説明があった。労働時間等設定改善法で短納期発注や発注内容の頻繁な変更など具体的に例示され、他の事業主に対する取引上必要な配慮が努力義務とされており、「荷主への直接監督指導ではないが、改善基準告示の周知啓発とともに、運送事業者の労働時間改善に協力してもらわなければ厳しい状況になるという荷主への要請は可能」(尾田進監督課長)とし、これまで欠けていた着荷主へのアプローチを検討し、次回の部会会合で具体的な内容を提示する考えを示した。また、各項目の議論では1日の休息期間について、タクシー・バスの見直し後「継続11時間以上を基本に継続9時間を下回らない」に対して、使用側は「11時間に近づけるプロセスの中で、2日平均の考えを入れてもらえば現場も対応しやすい」と要望した。