5月倒産 トラック46件と急増
過去20年で最多更新
厳しい経営環境に置かれる道路貨物(トラック)運送業の倒産が急増している。東京商工リサーチ(TSR)が10日発表したトラック運送業の5月の倒産件数は、前年同月比119・0%増の46件と3カ月連続で前年を上回った。5カ月ぶりに40件台に乗せ、月次ベースでは2010年以降の15年間で最多となった。5月としては05年以降の20年間で最多(08年45件)を更新した。1-5月累計は前年同期(104件)1・5倍超の162件で、20年間では10年の165件に次ぎ4番目の多さとなった。トラック運送業界は、コロナ禍から燃料価格の高止まりに加え、深刻なドライバー不足で人件費が上昇するなどコストアップに見舞われている。さらに、この4月から時間外労働の上限規制が適用され、4月と5月は倒産の増加率が2カ月連続で前年同月比2倍超と急増ぶりが目立つ。負債総額は64億5500万円(前年同月比265・5%増)、前年同月の3・6倍に増加した。負債5億円以上10億円未満が2件(前年同月ゼロ)、1億円以上5億円未満が20件(同8件)と増加し、負債総額を押し上げた。「人手不足」関連倒産は10件(前年同月4件)で、「後継者難」が6件(同ゼロ)、「求人難」(同3件)と「従業員退職」(同ゼロ)が各2件だった。燃料費の高騰などによる「物価高」関連倒産は11件(同8件)発生した。資本金別は1千万円未満が29件(前年同月比61・1%増、構成比63・0%)、従業員数別では10人未満が31件(同82・3%増、同67・3%)と、小・零細規模の倒産が圧倒的に多い。トラック運送業は構造的に小規模の下請け事業者が多く、コストアップ分の価格転嫁は難しい。公正取引委員会が今月6日に公表した「令和5年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況について」で、注意喚起文書を送付した荷主の行為類型別内訳(合計687件)では、「買いたたき」が239件(構成比34・8%)、「代金の減額」が142件(同20・7%)と、この2行為で半数以上を占め、下請け業者の苦境が浮き彫りになった。TSRでは、引き続き燃料費の高騰とドライバー不足が運送業の経営に大きな影響を与えていることから「燃料費や労務費上昇分の価格転嫁が遅れ、人手不足への対応ができない中小・零細企業を中心に、倒産件数の増加が続く」(情報本部)とみている。