前原国交相職員あいさつ「政権交代機に変える」

 前原誠司国交相は就任直後の9月17日、国土交通省職員に対するあいさつを行い、政権交代を機にこれまでの政治、行政を変えていくことに意欲を示した。日本が不安になる背景として国交相は、人口減少、少子高齢化、莫大な国の借金をあげ、これらを解決するための税金の使い方を見直す必要性を強調した。一方で、喫緊の課題としては日本経済の立て直しをあげ、国際競争力強化のための社会資本整備に意欲を示した。国交相は「革命に似た作業かも知れないが、皆さんと対話をしながら方向転換していきたい」と述べ理解と協力を求めた。

職員あいさつに向かう前原国交相
あいさつのため壇上に向かう前原国交相と拍手で迎える国交省職員

 これまで一貫して、政権交代ができる二大政党制を作りたいと思っていた。今回これが実現したが、政権交代は目的でなく手段だ。今までの政治、行政を変えていく良い転機とすることが政権交代だ。
皆さんは、日本に対する漠然とした不安を一国民として感じていると思う。私も感じている。その漠然とした不安はどこから来ているのか。私は、主に3つあると思う。

 1つは、日本が2004年をピークに人口が減少していく社会に入っているということだ。現在は1億1700万人だが、このままの出生率で推移すると2050年には9000万人になるといわれている。
2つ目は、他の先進国が経験したことのないほどの急速な少子高齢化を迎えているということだ。65歳以上の人口比率は現在21%であり、5人に1人が65歳以上だが、少子高齢化が進むと、2050年には65歳以上の人口比率が40%を超えるといわれている。5人に2人が65歳以上になる。15歳から64歳までの生産年齢人口比率は、現在の66%から2050年には51%に減少する。

 社会保障のお世話になる人が20ポイント増え、それを支え働ける人の比率は15ポイント減る。このままの社会でいくと日本はどういう状況になるか。若い人たちの負担が増え、リタイヤする世代の人々へのサービスが低下するのは自明のことだ。

 3つ目は、日本のGDPの1・8倍と言われる長期債務だ。これだけの莫大な借金を返せるのか。会社なら、とうに倒産している。それぐらい国として大きな借金を抱えている。

 私が見る日本、皆さんが見る日本も共通した大きな問題を抱えている。これを政治がどう解決していくか。これまで野党として投げつけてきた問題は、今与党となった以上、すべて我々が解決しなければならない。
我々は、どのような税のもらいかたをしてそれを再配分し、3つの大きな不安をどのように解決するのかという課題を突きつけられている。ともに国民に仕える立場として、どういう税金の使い方が正しいのかをもう一度考え直してほしい。

 今私の頭の中にある一番の問題点は、日本の経済、景気だ。1年前にリーマンショックが起き、経済状況は非常に悪くなった。各国協調の財政出動などで何とか大恐慌のシナリオは避けられたが、今後財政出動なしに立ち直っていけるかどうかは予断を許さない。

 一方で、先ほどの3つの不安から財政出動も思うようにできないことも事実だ。国交省の所管事業のなかで、もっと伸ばせる分野を探す必要がある。そのなかで、観光分野を良くできないか、考えていきたい。
航空政策、港湾などの競争力強化もしっかりやらなければならない。この分野はアジア諸国に後れをとっている。しっかりと税金を使ってでも整備しなければならない。逆にいうと、潜在力がまだまだ眠っている分野だ。
姉歯事件で建築基準法が見直されたが、手続きが煩雑だ。景気の問題もあり、建築基準法の再見直しも経済の観点からやらなければならない。

 もう1点、国交省の事業見直しを厳しくやらせてもらいたい。河川、道路含めすべての事業について行う。あわせて、特別会計のあり方を政府全体として見直す。国交省所管の特別会計ももちろん例外ではない。
天下りの廃止も国民に約束した。国交省所管の公益法人は沢山あるが、ゼロベースで見直す。皆さんに定年まで働いてもらうための制度設計は、公益法人や天下りの見直しだけでなく、公務員制度改革のなかで行いたい。
さらに我々の政策の大きな柱の1つに地方主権がある。時間がかかるが、地方出先機関を地方自治体に移管することを含め徐々にやっていく。地方への権限と財源の移譲も徐々に行っていくことになると思う。

 税金の使い道を変える、国と地方のあり方を変えることが民主党の大きな方針だ。国交省の役人としての誇りとプライドを持ちながら、日本が抱える大きな不安をどう取り除いていくかを考えてほしい。ある意味で大きな革命に似た作業かもしれない。皆さんと丁々発止の議論を重ね、進めていきたい。
脱官僚依存などといっているため、民主党に警戒感を持っている人もいるかも知れないが、少なくとも私はそういう気持ちを全く持っていない。皆さんの国への思いを伺い、対話をするなかで大きな方向転換をしていきたい。皆さんと一緒に日本の今後を作り、変えていく作業をしたいと考えているので、絶大なる協力をお願いしたい。