原価管理に荷主驚く

武田式運送原価計算システム活用企業紹介 東京のA社の場合

 「『武田式運送原価計算システム』は、操作が簡単で損益分岐点が分かり易い」。例えば、手待ち時間が発生した時点で、利益はなくなるということに改めて気づかされた。
 東京の下町で、早くから原価の把握など経営革新を掲げてきたA社・2代目社長のB氏は『武田式』のメリットとして「操作が簡単」な点をあげる。また、関東圏の標準的な原価コストが添付されているため、運賃・料金交渉に役立てようと、今年4月から本格導入した。主に、スポット受注の損益判断に活用していたが、景気低迷の影響で受注が大幅に減少したため、スポット輸送から撤退し、車両も減車した。現在の保有車両数は9台(普通7台、小型2台)である。
 スポット輸送からの撤退は、新規荷主の獲得メドがついたからだった。B社長はさっそく、8月から開始した新規輸送にも原価計算ソフトを活用した。


■損益判断の目安

 計算結果によると、9月は連休も多く19日稼働(車両は1日2~3運行)だったため、ほとんど利益が出なかった。ある中型車(6㌧積み)の実績をみると、19日間のうち半分の9日間は赤字で、1ヵ月の営業利益はわずか9358円(1日当たり492円)だった。
この車両の9月(19日稼働)の売上高は97万5554円で、1日平均が約5万1345円であり、売上げは悪くない。1日当たりの最大売上げは7万3474円、最少が3万1200円。1日平均5万1345円となる計算だ。売上げに大きな差があるのは、運行回数の差によるものだ。
利益は、必ずしも売上高と連動していない。売上げが最小の「3万1200円」だった日の営業利益は1353円、利益率は4・0%だ。一方、売上げ「6万7478円」の日でも、高速道路料金(1万820円)が圧迫し1567円の赤字になった。
この車両の9月の「固定費」は39・9%、「変動費」が25・7%、「一般管理費」が22・8%、「高速道路費」が10・7%、そして「利益」は0・9%。かろうじて赤字を免れた。一般管理費率の高さは荷主からも指摘されているという。


■運賃交渉での活用も

 運賃は、相場に比べれば「それほど悪くはない」が、利益が出ない。ソフトウェアを活用するうち、B社長は、手待ち時間の発生が利益に大きく影響していることに改めて気づいたという。
A社の運転手の平均残業時間は1日4~5時間。1時間当たり1500円近い残業手当を払うと、利益は瞬く間に消えてしまう。手待ち時間の解消は利益に大きく直結するため、B社長は今後粘り強く荷主に理解を求めていく考えだ。
スポット輸送からの撤退の際、配車担当は原価計算ソフトを「無用」として利用を一時中断したが、現在では荷主へのアピール材料とするところまで活用度は上がってきている。過日、プリントアウトした原価計算データを荷主に提示したところ、荷主からは、あまりにも詳細に収益管理していることに驚かれたという。
今後は、この原価計算結果を活用して運賃交渉に発展させていくことをめざしている。