物流から景気を良くしたい
大手物流企業の業績が悪化している。業界最大手の日本通運の場合、今期3度目の下方修正だ。国内貨物は減少に転じ、国際貨物の減少は国内貨物を上回る。同社では今後もこうした傾向が拡大、継続すると想定し、大幅な下方修正に踏み切った。
日本通運の2009年3月期連結決算は、営業利益が34%減、経常利益が32%減と3割を超える減益となる見込みだ。世界各国にネットワークを有する同社にとって、今回の世界同時不況の影響をまともに受けたかたちだ。とくに、10〜12月は営業利益が前年同期に比べて半減するほど急激に悪化している。
日通の業績では、国際航空貨物の落ち込みが顕著だ。国際航空貨物の売上げは、昨年10月が前年同月比10.4%減、11月が29.6%減、12月が36.9%減と月を追うごとに悪化している。とくに輸出の減少幅が大きい。
主力のトラック輸送売上げも10月が2.3%減だったのに対し、11月は9.4%減、12月が6.6%減だ。いずれも11月以降急速に悪化していることがわかるが、航空貨物に比べれば減少幅は小さい。
経済の急激な変化により、不透明かつ不安定な状況であることから日本通運では、新年度からの中期経営計画策定を見送り、単年度の経営基盤強化方針を5月にも示すことにした。
3PLで順調に業績を伸ばしていた日立物流も今期初の下方修正を余儀なくされた。10月の上方修正から一転しての下方修正であり、さしもの日立物流にも、このかつてないほどの経済の落ち込みが襲いかかっている格好だ。ただ、日立物流の場合、3PLの新規受注は好調で、既存顧客の物量減を賄っている。
ヤマトホールディングスも今期2度目の下方修正だ。小口商流貨物の伸び悩みと企業物流での輸出貨物の減が響き、2009年3月期連結業績は営業利益が18%減、経常利益が19%減となる見込みだ。ヤマトHDでは、LT(物流)、IT(情報)、FT(決済)の3つの機能を組み合わせた提案営業に力を入れており、今後急速な拡大が見込まれる「ネットスーパー」分野などに積極的な営業を展開していく方針だ。
物流企業の業績悪化は、もちろん自動車や家電といったメーカー各社の落ち込みに比べれば限定的だ。ただ、物流は「運んでくれ」という需要があって初めて発生するビジネスであり、需要創出型の産業ではないといわれてきた。物流産業から景気を良くしていくことは困難とも言われている。果たして、物流業界から需要を創出することは本当に不可能なのだろうか。
(日本流通新聞2009年2月2日付)