雇用助成金も活用したい
世界的な景気の低迷を受けて、国内の雇用情勢も急激に悪化している。
厚生労働省が実施している雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金の利用状況は、昨年12月の休業等実施計画届受理件数が、事業所数で11月の9倍に当たる1758事業所に、対象労働者数では15倍に当たる13万7109人に急増している。
全日本トラック協会がまとめた昨年10〜12月の景況感調査によると、7〜9月期にプラス2だった人手の過不足感は、10〜12月期にマイナス20へと悪化し、やや過剰感が見られ、今年1〜3月期はさらに悪化してマイナス36になると見込まれている。
業界の採用状況も、同じく7〜9月期にマイナス13だったものが10〜12月期には同25に、1〜3月期は同36へと悪化する見通しだ。
こうしたなかで、厚生労働省は、昨年12月に創設した中小企業緊急雇用安定助成金の運用方針について、トラック運送事業者の事業特性を考慮した審査方針をまとめ、近く全国の各労働局に通達するという。
中小企業緊急雇用安定助成金とは、従来の雇用調整助成金制度を見直し、中小企業に特化したかたちで要件の緩和などを行い、中小企業により手厚い助成を行えるようにしたものだ。
世界的な金融危機が雇用面にも急激に影響を及ぼすなかで、事業活動の縮小を余儀なくされている中小企業の雇用維持を支援する措置で、労働者を一時的に休業させたり、教育訓練をさせたり、出向させた場合に、手当や賃金の一部を助成するものだ。
全業種が対象となるが、制度そのものが製造業の工場労働者などを念頭に置いたものとなっているため、長距離運行を行うトラック運送事業者にとっては、使いづらい面もあったようだ。
一部の労働者を休業させたうえで残った労働者に時間外労働をさせるような場合は、時間外労働をさせる仕事があるなら休業者を減らすべきとの考え方から、助成金が支給されない場合があるという。一方で、長距離トラック輸送の場合、運転者は必然的に時間外労働となるが、途中で運転者を交替させるわけにもいかないという事業特性がある。
実際に支給を断られたトラック運送事業者もあるようで、全日本トラック協会が厚生労働省に事業の特性を考慮するよう求めていた。
厚生労働省がこうした事業の特性に配慮した審査を今後行うようになれば、業界にとっては朗報だ。厚労省は今年度の1次補正予算、2次補正予算で次々と制度の拡充を図っている。こうした制度も十分活用しながら難局を乗り切りたい。
(日本流通新聞2009年2月9日付)