転換期迎えたトラック業界

1990年の規制緩和以降、一貫して増え続けてきたトラック運送事業者数が、昨年10〜12月は撤退事業者数が参入事業者数を上回り、「減少」に転じた。四半期単位の瞬間風速とはいえ、撤退が参入を上回るのは、規制緩和以降初めてと見られる。営業用トラックの登録車両台数も昨年4月から11月にかけての半年余りで約8千台減少しているという。登録台数のため、すべてが減車とは限らないが、荷動きの急激な減退と時期を合わせて、事業者が減り、車両が減っている。
 厳しい業界実態を裏付けた格好だが、規制緩和により増え続けてきたトラック事業者数の減少は、1つの転換点にも見える。
 帝国データバンクの倒産統計によると、2008年のトラック運送事業者の倒産件数は前年の2.2倍に増え、負債総額は2.6倍に増えている。12日に都内で開かれた講演会で全日本トラック協会の豊田専務理事は「負債額の大きな倒産が多いということは、中堅どころが倒れているということだ。5〜10台の事業者が新規参入で増え、倒れているのは50〜100台のところだ。小さいところは生き残り、残ってほしい企業が残らない」と述べて業界の将来を憂えた。
 つまり、しっかりした企業が淘汰され、保有台数5台などの小規模事業者が生き残るという構造変化を伴っているのだ。
 果たして最低保有台数5台というのはトラック運送事業を営むうえで適正な規模といえるのか。国土交通省の一見貨物課長は、日本物流研究会のセミナーで、トラック運送事業の適正規模を探るため、5台の事業者をはじめとする小規模事業者の実態調査を近く行う考えを明らかにした。
 セミナーで、出席した運送事業者から「社会保険に加入していないことを堂々と表明する新規参入事業者がいる。事業者の適正規模を検証してほしい」との要望があったことに答えたものだ。
 国土交通省は、今春にも厚生労働省、経済産業省、公正取引委員会との4省庁課長級の連絡会議を立ち上げる意向だ。社会保険未加入事業者に対する行政処分が強化されたが、肝心の社会保険庁に対する照会の回答が滞っているため、処分が進まないという。連絡会議の定期開催で、こうした関係省庁間の連携がスムーズに進むことが期待される。
 未曾有の世界金融危機で、市場原理主義に基づく金融自由化が失敗だったことがわかった。規制緩和も万能ではない。社会保険にも加入しない小さな事業者が実運送を支える業界の姿は健全とは言えない。

(日本流通新聞2009年2月16日付)