首都高割引
なお注視
首都高速道路会社が、物流事業者向けの大口割引制度を4月から実施に移すことを決めた。トラック運送業界が従来から要望していたもので、割引率は5%だが、近い将来の拡充も視野に入っているという。注目された適用条件だが、協同組合などの契約者単位での月間利用額が100万円超、かつ車両1台あたりの月間平均利用額5000円超とされた。一方で、これまで利用額の1%を協同組合に還元していた集金事務集約化協力金は3月末で廃止される。
協同組合全体で月間100万円、1台当たり平均5000円という大口割引の基準は、ハードルとしてはそれほど高くなく、東京では9割以上の組合が該当するという。集金事務集約化協力金は、協同組合が首都高速を月間100万円以上利用した場合に利用額の1%を協力金として協同組合に還元する仕組みであり、この契約を結んでいた組合はほぼ対象になると考えられる。
100回回数券の廃止以来、トラック運送業界では首都高速の通行料金割引に不満が募っていたが、これで一歩前進と評価されているようだ。
大口割引の割引率は5%で、車両単位割引である多頻度割引(お得意様割引、最大12%)が上乗せされるため、最大で17%程度の割引になるが、トラック業界ではあくまでも廃止された100回回数券(18・4%)並みの割引を要望しており、まだ足りない。
首都高速では、昨年10月から対距離料金制度に移行する予定だったが、トラックのような長距離利用には実質的な値上げとなるため、8月の経済対策の一環として導入が延期された経緯がある。対距離料金制度については、昨年12月の道路特定財源一般財源化についての政府・与党合意で、追加経済対策「生活対策」による重点的な引き下げの後に上限料金を抑えつつ、対距離料金制度を検討する、と記述された。つまり、生活対策による料金引き下げが2010年度で終了するため、2011年度以降の導入を示唆したものだ。
利用距離に応じて料金を課金する対距離制では、長距離利用者は実質値上げとなる。今年1月16日の高速道路有効活用・機能強化計画では、対距離制検討の際には、段階的な対距離料金、事業者向け割引(大口多頻度)の拡充を検討すると明記している。
このため、今回の大口割引5%は2010年度までの時限的なもので、11年度以降に対距離制に移る際にはさらに拡充されると見込まれるが、その内容がどのような形になるのかは予断を許さず、首都高速料金割引の進展には、なお注視が必要だ。
(日本流通新聞2009年3月2日付)