宅配便市場の活性化を

日本郵便と日本通運が共同出資した宅配便専門会社、JPエクスプレスが1日から、宅配便事業を開始した。情報システムの統合が遅れるため、当面はペリカン便のみが承継され、9月末まではペリカン便の名称でサービスが行われる。10月1日からゆうパックが合流して新ブランド名での事業開始となる予定だ。
 JPエクスプレスの宅配便事業は、日本通運側の情報システムを引き継いだため、今回の移行に際して大きな混乱は起きていないようだ。ただ、ゆうパックは元々郵便のネットワークのなかに組み込まれているため、これを切り離す必要があり、半年遅れての統合となるという。
 ペリカン便は、運賃、サイズ、割引制度を大幅に刷新しての再スタートとなった。運賃は業界最安値水準のゆうパックに合わせて大幅に引き下げた。例えば、最も小さい60サイズの最低料金を740円から600円(同一県内)へと2割引き下げ、さらに持込割引で100円引き、新たに設定した同一宛先割引で50円あるいは複数口割引で50円引きとし、「450円から発送できる」と低価格を前面に押し出した。
 値下げと同時に、サービス品質も高める。新会社の白金会長は「宅配業界のなかで最高品質を誇るサービス」をめざす考えを強調した。
 低価格・高品質戦略で、ヤマト運輸と佐川急便の「2強」を追う体制だが、新会社のシェアはゆうパック統合後でも15%程度に過ぎず、7割を超えるシェアを持つ2強に伍していくのは容易なことではない。
 両者の統合を「弱者連合」と揶揄する向きもあるようだが、新会社には、徹底したサービス競争で宅配便市場を活性化してほしいところだ。ゆうパックは、個人顧客と小口顧客に強みを持ち、ペリカン便は大口顧客を多く持つという特徴がある。新会社では「その中間が弱いので強めたい。料金は最低水準になるので、品質が勝負だ」(白金会長)とサービス品質の向上に磨きをかけていく考えを示している。
 一方、ここへきて、かんぽの宿売却に待ったをかけた鳩山総務相が、今度は宅配便統合にも注文をつけ、関係者に困惑が広がっている。総務相は、新会社が、儲かるところでしか配送しないという「いいとこ取り」をするのではとの疑念を抱き、「10月の統合」を現時点では認めず、日本郵便が改めて事業計画を出し直す事態になっている。
 さらに、日本通運と日本郵便の給与差の問題など、調整すべき問題は少なくない。期待と困惑が交錯する船出となったが、その未来は新会社自らが切り開いていく以外にない。

(日本流通新聞2009年4月6日付)