5台割れ ようやくメス

国土交通省が、許可基準である最低車両台数基準割れ(5台割れ)トラック事業者の実態にようやくメスを入れることになった。同省は6月を「集中月間」と位置づけて、問題のありそうな5台割れ事業者を集中的に監査する。
 約4千といわれる5台割れトラック事業者は、小規模な下請実運送事業者として、低運賃で無理な運行を強いられ、社会保険にも入らず、運行管理もままならない経営を余儀なくされている、というのが関係者が描く典型的な仮説だ。このため、安全な輸送の確保にしわ寄せが行き、トラック事業全体の安全性を低下させているのではないか、というわけだ。
 長らく放置されてきた5台割れ事業者問題だが、今回の集中監査を機にその実態が明らかになることが期待されている。その意味で今回の監査は実態調査の色彩が濃いが、国交省では違法な状態が確認できれば行政処分も辞さない構えだ。
 もちろん、大切な荷主を失い、やむにやまれず4台以下に減車せざるを得ない事業者もあろう。ただ、最近では、許可基準ギリギリの5台で許可を取得し、事業開始後すぐに減車して運行管理者選任義務を逃れる、という「確信犯」的な事業者も少なからず存在すると言われている。
 こうした行為が横行しているならば、それは問題であり、厳しく対応する必要がある。また、5台未満となることで運行管理者の選任義務はかからなくなるが、経営者に運行管理を行う義務がかかる。その場合国家資格の保有は求められないが、「5台未満となれば運行管理をしなくても良い」と誤解している事業者もあると見られており、こうした事業者にも是正を指導していく方針だ。
 6月の集中監査では、社会保険等への加入状況、適正な運行管理の励行などが主なチェック項目となる。
 監査で把握した実態を踏まえて、国交省では必要に応じて制度の見直しなどを検討する考えだ。検討項目としては、5台割れを生まないための仕組み、すなわち現在届け出制の減車手続きを、4台以下となる減車については認可制とすることが考えられる。また、現存する5台割れ事業者に新たに運行管理者の選任を義務づけるという案もある。
 さらに、集中監査の結果によっては、やはり5台という最低車両台数基準を引き上げるべきだとの判断に帰結する可能性もある。
 最低車両台数は市町村の人口に応じて定められていたものが順次段階的に引き下げられ、全国一律5台となった経緯があるが、その引き上げには理屈が必要となろう。

(日本流通新聞2009年4月13日付)