新車購入補助の効果は…

政府・与党が打ち出した新たな経済対策「経済危機対策」は、景気底割れリスクを回避するための短期的な対策と、世界経済の「大調整」への対応という構造的な中長期的対策を示したもので、対策規模は国費15.4兆円、事業費56.8兆円という過去最大規模の対策となった。
 短期的、緊急的な対策としては、雇用調整助成金の拡充や企業の資金繰り支援、公共事業の前倒し執行などを盛り込み、未来への投資として低炭素革命、健康長寿・子育て、21世紀型インフラ整備をあげた。
 低炭素革命では、低燃費車や省エネ家電の普及策が盛り込まれた。
 低燃費車の購入、あるいは新車への買い換え支援は、世界的に低迷する新車販売をテコ入れするため、すでに同様の対策を導入した欧州諸国の例を参考に創設したものだ。
 2月の国内自動車生産は、乗用車が前年同月比57.4%減、トラックが同47.9%減と大幅に落ち込んだ。国内販売は、およそ2割減のペースがこのところ定着している。
 9年以上の車齢の乗用車を廃車して新車を購入する場合に、1月から2500ユーロ(約32万円)を補助しているドイツでは、新車販売台数が2月には21%増、4月には40%増となるなど大きな効果が出ている。
 我が国の新車購入補助の特徴は、トラック・バスなどの重量車にも補助が行われる点だ。車両価格が乗用車に比べて高いため、補助も手厚くなっている。
 日本の場合は、乗用車、重量車ともに廃車を伴う買い換えの場合、廃車する自動車の車齢を13年超としたが、乗用車の場合は2010年度燃費基準達成車という要件がついているものの、重量車の場合はすべての新車(新長期規制適合車)が対象となる。補助金額も小型40万円〜大型180万円と大きい。
 廃車を伴わない新車購入の場合は、重量車についても一定の環境性能要件がつく。2015年燃費基準達成で、かつ排出ガスが規制値より10%以上低減されている車両とされたが、該当車両はすでに新車販売台数の3分の1程度を占めているとされ、それほど高いハードルではなさそうだ。
 廃車を伴わない低燃費トラック購入には、自動車重量税と自動車取得税の軽減も適用されるため、合わせて車両価格のおよそ1割程度の負担軽減が図られることになる。
 重量車の新車購入に対する手厚い補助は評価できるが、利用できるのは新車を購入できるだけの余裕がある運送事業者となる。その意味では、運送事業者の側から見ると、不況対策としての効果は限定的なものとなる、との見方もできよう。

(日本流通新聞2009年4月20日付)