画餅では意味がない

全日本トラック協会が、06年度に定めた環境対策中期計画の数値目標を見直すことになった。環境問題対策委員会の下のワーキンググループで検討を進め、来年1月にも結論を得る予定だ。トラック輸送にさらなる省エネ余地があるのかを検討するものだが、目標の上積みも視野に入れて検討を進めるという。
 トラック運送業界は環境対策に非常に熱心な業界だ。大気汚染対策では、先進的な東京都条例や国の自動車NOx・PM法に従い、都市部の事業者は苦しい経営のなかで新車への代替に取り組んできた。
 低公害車の導入も他業界に先駆けて進めている。古くはメタノール自動車から、現在はCNG車が主流となり、ハイブリッド車もまた普及台数を伸ばしている。
 大手企業では、佐川急便がCNG車の導入を積極的に進め、導入台数は4184台に達する。日本国内の民間企業として最多の保有台数だ。同社は2012年度までに7000台の導入をめざして充填スタンドの増設を進めている。
 ハイブリッド車の導入を先導しているのはヤマト運輸だ。ヤマトは昨年度、1847台のハイブリッド車を導入し、累計保有台数は4280台に達している。
 全ト協の08年度低公害車導入助成台数は、前年度比65%増の4508台と大幅に増えた。助成額も5割増の5億6千万円余だ。毎年多額の予算を充当し、着実に普及台数を増やしている。
 麻生首相は10日、2020年の温室効果ガスを2005年比で15%削減する我が国の中期目標を打ち出した。欧州の13%減、米国の14%減を上回る印象を与え、さらに京都議定書の基準年である1990年比では7%減と「京都」の6%減を上回る削減率であり、ポスト京都の国際的な枠組み作りを主導したいという気持ちが強くにじみ出た数値目標だ。
 ただ、この15%減は、京都議定書の6%削減のように、森林吸収や海外からの排出権購入の分を含んでおらず、エネルギー起源CO2削減で稼ぎ出さなければならない「真水」の数値だ。京都議定書の6%削減の真水部分が0・6%削減であることと比較すると、極めて挑戦的な厳しい削減目標と言える。
 トラック運送業界では、2010年のCO2排出原単位目標の上積みも視野に検討に入るが、これまでの自営転換、エコドライブ、トラックの燃費向上といった対策でどこまで上乗せ余地があるのかは不透明だ。
 地球温暖化は我々の世代で是非食い止めたいが、目標が絵に描いた餅では意味がない。

(日本流通新聞2009年6月15日付)