宅配便 さらなる進化を期待

トラックによる宅配便の取扱個数が初の減少に転じた。昨秋以降の世界同時不況のあおりで、企業から出る荷物の減少が著しかったためだ。右肩上がりを続けてきた宅配便市場も曲がり角を迎えたかに見える。
 宅配便の歴史は、1976年1月20日にヤマト運輸が「宅急便」のサービスを開始したことに始まる。故・小倉昌男氏が生みの親であることは広く知られている。当時、小口の輸送サービスは、郵便小包か鉄道小荷物しかなく、郵便局か駅に持ち込む必要があった。同社ウェブサイトの”宅急便30年の歩み”によれば、小倉氏は「小口の荷物の方が、1㌔㌘当たりの単価が高い。小口貨物をたくさん扱えば収入が多くなる」と確信し、「電話1本で集荷・1個でも家庭へ集荷・翌日配達」という宅急便を世に送り出した。
 爾来30余年、「宅急便」は宅配便首位の座を走り続けてきた。
 国土交通省(当時は運輸省)が統計の公表を開始した1984年度の宅配便取扱個数は3億8490万個だ。このうち「宅急便」は1億5132万個を占め首位、2位は日通「ペリカン便」で7354万個、3位は日本運送の「フットワーク」で4448万個だった。シェアは「宅急便」が39・3%、「ペリカン便」が19・1%だ。
 「宅急便」のシェアが最大となったのは97年度で、46・6%を占め、7億4215万個を扱った。今や2強の一角を占める佐川急便がベストテンに顔を出し始めたのは翌98年度からだ。当時はまだ6位で、扱い個数も1億1341万個と「宅急便」の7分の1だった。
 ただ、佐川急便はその後、一般積み合わせ運送で取り扱ってきた既存荷物を宅配便にシフトし、さらにその翌年の99年度には2位に浮上。以後「ペリカン便」を抑えてシェアを伸ばしている。
 07年度からは民営化した「ゆうパック」が宅配便統計に加わった。その「ゆうパック」は今年10月に「ペリカン便」と統合し2強を追撃する構えだ。
 人口減少時代を迎えて、宅配便市場も飽和状態と捉えることもできるが、ライフスタイルの変化に伴う通販市場の拡大や、決済手段の多様化などに対応して、今なお宅配便は進化を続けている。生みの親のDNAを引き継ぐヤマト運輸では「座して待つのではなく、需要を呼び起こす新たなサービスを提案したい」と話す。
 現下の経済情勢下では価格競争も重要となろうが、消費者、企業が喜ぶようなサービス競争を通じて、さらなる進化を期待したい。

(日本流通新聞2009年7月6日付)