揺れる道路行政
道路行政が揺れている。もはや道路特定財源は一般財源化され、自動車ユーザーが納めるガソリン税、軽油引取税などを、福祉などに使うことができるようになった。
政権交代を旗印に攻勢を強める民主党は、道路特定財源諸税の暫定税率撤廃と高速道路無料化を公約として掲げ、対する与党は高速道路料金の乗用車上限千円、平日3割引などで対抗する。
7日、東京・霞ヶ関の国土交通省で開かれた、社会資本整備審議会道路分科会で、こうした政治主導での道路政策に対する不満や、政権交代に伴う道路行政への影響を懸念する声が相次いだ。
道路特定財源の一般財源化や、乗用車千円など、確かに最近の道路政策は政治主導で進められている。
道路分科会の委員からは「道路分科会は何を議論するのかよくわからない」、「官邸に言われて乗用車を千円にした。民主党がタダだといったらするのか」、「乗用車千円は景気対策であり、道路行政とは無関係だ」といった不満が飛び出した。
道路行政への「ご意見番」として、忸怩たる思いがあるのだろう。
静岡県知事選での実質的な大敗など、自民党が劣勢に追い込まれるなかで、民主党政権の誕生が日に日に現実味を増している。
民主党が政権公約として掲げる、暫定税率撤廃を巡っては、党内でも意見が分かれていたようだが、最終的に政権奪取後初年度から撤廃することで決着したという。
ただ、国で1・7兆円、地方分で0・9兆円の合計2・6兆円の財源に穴が開くことに対する異論もなお民主党内にくすぶっているとされる。とくに地方では、道路特定財源だけでなく、同規模の一般財源も投入して道路整備を進めており、多くの自治体でさらに財政が逼迫することになる。
道路分科会では、「予算が半分になったらどうするのか。最低限必要な予算を出しておくべき」、「道路予算が減ったときのことを議論しておくべき」と暫定税率の廃止で道路予算が大幅に削られることに対する懸念の声も相次いだ。
民主党の暫定税率撤廃構想は、必ずしもこうした財源問題に明確に答え切れていない。
道路分科会の委員からは「もう一度ここで道路行政の基本的なスタンスを見直すべき」との指摘もあった。どんどん作ればよい、という時代ではもはやあるまいが、歩道の整備など豊かな社会を実現する道路の質の向上も重要だ。必要な道路の量と質、そのために必要な財源の議論をもっとしてほしい。
(日本流通新聞2009年7月13日付)