待ち時間解消に期待
厚生労働省がトラック運転者の長時間労働抑制に向け、荷主を交えての検討を開始した。同省では「ムダな待ち時間をなくすためには、荷主の協力が不可欠」と意義を強調しており、是正に期待がかかる。
トラック運転者の長時間労働は今に始まった話ではないが、厚生労働省が毎年発表する、臨検監督結果から集計した改善基準告示の違反率は依然として高く、2007年の実績で何らかの違反があった率は61・0%だ。なかでも最大拘束時間の違反率が48・9%と最も高い。
ムダな待ち時間を減らそうという機運は、国土交通省が6月に開催したトラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議(議長=野尻俊明流通経済大学教授)でも高まっており、厚労省の動きも含め、荷主を交えて改善策を話し合う好機といえる。むしろ、厚労省が積極的に乗り出すことで、「トラックをこき使う荷主」というレッテルを貼られたくない荷主企業にとっては、より抑止力が働く、と見るムキもある。
厚労省が昨年度、全日本トラック協会に委託してまとめた改善基準告示遵守に向けた事例集では、農産物の荷降ろし先である市場での作業時間を短縮するため、荷主の協力を得てパレット化を進めた結果、手待ち時間を含めて2〜3時間かかっていた荷降ろし作業が30分程度で完了した、といった事例のほか、着荷主に荷降ろし時間を1時間程度前倒ししてもらい、余裕ができたことにより安全運転に心がけられるようになった事例などが紹介されている。
なかには、積み込みの指定時刻を過ぎると待機料金が発生する設定にしたり、時間をオーバーした分を取り戻すために利用する高速道路料金を荷主負担にする、といったルールを取り決め、手待ち時間を短縮したというケースもある。
国交省のトラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議でも、「待機に対するコストを誰も負担しておらず、これが拘束時間を延ばしている」、「留置料の設定などを検討する必要がある」、「労働時間なのに休憩時間扱いされている」などと改善を求める意見が相次ぎ、荷主とトラック事業者間の取引適正化のための課題として、今後テーマとしていくことで合意した。
急激な景気悪化で荷主企業もトラック運送事業者も厳しい経営環境におかれているが、待ち時間の短縮は、工夫次第でそれほどコストをかけずに業務を効率化することが可能だ。トラックの長時間労働、過労運転は、そのまま国民の安全に直結する問題だ。荷主を含めた関係者の気運が高まることを期待したい。
(日本流通新聞2009年7月27日付)