やはり悪かった5台割れ

国土交通省が今年6月に行った5台割れ事業者に対する集中監査の結果、73%の事業者が何らかの法令違反を犯して事業を営んでいることがわかった。
 運行管理者の選任義務が解かれる5台割れ事業者については、従来からコンプライアンスに問題があるのではと指摘されており、国土交通省も「巷間いわれていたことが裏付けられた」と受け止めている。
 監査の結果、運転者に対する点呼違反が監査対象事業者の43%で、指導監督違反が39%で、乗務時間などの告示違反および健康状態の把握違反が30%で確認された。これら運行管理面のずさんさが明らかになったことで、今後は5台割れ事業者に対する運行管理者選任義務づけなどの規制強化が焦点となる。
 トラック運送事業法では、営業所の車両台数が5台以上の場合、運行管理者の選任を義務付けているが、これは車両台数が5台を超えると経営者だけでは目が行き届かなくなるため、別途運行管理者を選任させるべきとの考え方に基づくもので、そもそも何台であろうと、点呼など適切な運行管理を行うことはトラック運送事業者の義務だ。
 ところが、最低車両台数が5台に引き下げられ、運行管理者選任義務がかかる5台と一致してしまったため、許可時には5台そろえていても事業開始後に減車して運行管理者選任義務を逃れるという「確信犯」が横行しているともいわれる。
 国土交通省では、4台以下であっても運行管理者(有資格者)の選任を義務付けるなどの規制強化策を今後検討していく。
 5台割れ対策としてはこのほか、保有台数が4台以下となってしまう減車を届出制から認可制に強化することも一時検討された。さらに、現存する5台割れ事業者に対して、一定の猶予期間後、保有台数を5台に戻すことを義務づける案も検討されたが、いずれも実施困難として宙に浮いたままだ。
 有資格運行管理者の選任義務がなくとも、必要な運行管理は経営者の義務だが、5台程度の小規模事業者ではそのような余裕がないのか。であれば、一定の安全管理体制を整えられ得る適正な事業規模とはどの程度なのかを検証する必要がある。
 交通労連や運輸労連では、「11台」程度を健全な事業遂行に必要な事業規模として、最低車両台数の引き上げを求めている。
 国交省ではトラック事業の将来ビジョンづくりの中で最低車両台数についても議論していくようだが、ことは安全に関わる話であり、早期に結論を得るべきだ。

(日本流通新聞2009年8月24日付)