今後の業界と政治
ついに政権交代が現実のものとなってきた。総選挙は民主党が308議席、自民党が119議席と当初の予想通り民主党の圧勝に終わり、民主党を中心とした鳩山新政権が16日にも誕生する。
2日付の朝日新聞朝刊は、同社の世論調査結果から、民主党が衆院選マニフェストで打ち出した子供手当の支給に賛成は31%で、高速道路の無料化に至っては賛成は20%にとどまっていることを報じている。
今回の選挙結果は、朝日新聞の世論調査からもわかるように、民主党に対する積極的な「YES」というよりも、自民党に対する「NO」と見て取れる。有権者は「政策より政権交代」を選んだというわけだ。
であるからには、マニフェストの実行には、慎重な対応が求められるのではないか。
高速道路無料化については、トラック運送業界内でも「世論を無視して強行できるのか」といった声も出始めた。いずれも巨額の財源を必要とすることもあり、なお曲折が予想される。
霞ヶ関も手探りだ。高速道路の無料化、暫定税率の撤廃のほか、補正予算の執行停止や公共事業の削減まで示唆している民主党だが、国土交通省では「新政権の考え、方針が示されれば対応したい」(谷口博昭次官)と白紙の状態だ。
高速道路無料化については、「現行の値下げでも、地域への経済効果がある一方で、渋滞も起きる。競合する交通機関にも影響がある。そういったことを新大臣に説明し、大臣の指示を仰ぎながら対応したい」(同)と新しい大臣の指示に従う考えを示している。
民主党の岡田幹事長と直嶋政調会長は2日、河村官房長官に対し、政権の円滑な移行に協力を求め、3日には官房長官から各閣僚に協力要請が行われた。谷口国土交通事務次官も民主党幹部にあいさつに行く意向を示しているが、4日現在まだ実現していないようだ。
トラック運送業界も今後の政治との接し方を模索している状況だ。基本的には「時の政権与党と良好な関係を築いていく」(トラック協会関係者)ことになろうが、これまでの自民党との関係を無視するわけにもいかない。
自民党は、次期総裁候補が定まらないなど、執行部体制の立て直しさえままならない状態で、トラック業界とは蜜月関係にあったトラック輸送振興議員連盟の活動が今後どうなるのかは不透明な状況だ。
政治情勢が落ち着きを取り戻し、業界との接し方が定まるまでは、もう少し時間がかかりそうだ。
(日本流通新聞2009年9月7日付)