様変わりする税制改正
鳩山新政権の下で新たに設置された、政府税制調査会が初会合を開き、来年度税制改正に向けた議論がスタートした。
自民党政権下では、党税調が大きな力を持ち、税制に詳しい長老議員らで構成する「インナー」と呼ばれる幹部会で重要事項が決められていた。政府にも税制調査会があったが、党税調の方針を追認したり、長期的な税制のあり方を審議するなど、その存在感は大きくなかった。
8日の政府税調であいさつした鳩山首相は「これまでは党税調が主導力を発揮し、二元的な状態だったが、政府と与党の一元化が実現した」と述べた。
鳩山首相の諮問は、人口減少と超高齢化社会に突入した我が国が将来に夢や希望が持てる国家であり続けるためには、旧来型の資源配分を転換し、社会全体が支え合う社会モデルを構築する必要がある、としたうえで「税制への不信感・不公平感を払拭し、納税者の立場で税制全般を見直す必要がある」と指摘した。
具体的には、マニフェスト(政権公約)で実施することとしている税制改正項目についてその詳細を検討することのほか、租税特別措置のゼロベースでの見直し、エネルギー課税の環境負荷に応じた課税への見直し検討などを求めた。
マニフェストの税制改正項目では、ガソリン税や軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率廃止や中小企業法人税率の引き下げ(18%↓11%)などが焦点となる。
暫定税率について、記者会見した峰崎財務副大臣は「一般財源化により、理屈が通らないなら、暫定税率は撤廃するのが筋だ」と述べ、公約通り撤廃する考えを示した。
通常の税制改正要望は、各省の担当副大臣が10月30日までに再提出する。各省は前政権下で8月末に要望を提出しているが、要望が真に必要なものかどうかを精査し、絞り込みをさせる。さらに、減税を要望する場合には、いわゆる「ペイ・アズ・ユー・ゴー原則(財源なくして減税なし)」に基づき、見合い財源案をあわせて提出するよう求めるなど、環境はかなり厳しいものとなる。
自民党税調時代は、業界団体が各部会を通じて税調に要望を提出し、党税調が利害調整を行っていたが、今後は各省レベルでヒアリングを行い、各省の政策会議で調整することになる。ただ、高度な政治判断を求められる場面も予想され、思惑通り機能するかどうかは未知数だ。
いずれにせよ、各省の副大臣の判断によるところが大きくなりそうだ。国土交通省では、馬淵副大臣がキーマンとなる。
(日本流通新聞2009年10月12日付)