市場原理と規制のバランス

第14回全国トラック運送事業者大会が15日、愛媛県松山市内で盛大に開かれた。約1500名という過去最多規模の参加者があり、分科会では熱のこもった討議が行われた。
 分科会は会場の都合で、従来の3分科会ではなく2分科会となり、「事業基盤の強化と取引適正化」をテーマとした第1分科会では、パネリストの発言が一巡した後、会場からも10名を超える発言者があった。
 規制見直しに関する発言の発端は会場の壇上に掲げられたスローガンの懸垂幕。これを指しながら会場の事業者が「3年前から掲げているが、どうなっているのか」と質問し、その後規制見直しに関する発言が相次いだ。
 このうち、最も会場内で賛同の拍手が大きかったのは、大阪の事業者からの発言だ。その事業者はタクシーの規制見直しを内容とした新法がこの10月から施行されたことを取り上げて、どうしてトラックでもできないのか、と不満をぶちまけた。
 この事業者は「社会保険にも入らない事業者が参入し、同じ土俵で競争ができない。3カ月に1度ぐらい社会保険料等の領収書のコピーを提出させるべきだ。5台で許可を得て、現実には3台で親子3人で事業をしている」と実態を指摘し、「新規免許と増車を凍結してほしい。国交省に陳情すべきだ」とタクシー事業並みの規制強化を求めた。
 さらに別の事業者も「規制緩和で運賃が上がらない。昨年来売上げは半減し、新政権による公共事業削減でまたまた厳しくなる。違反を繰り返す事業者は許可を取り消すべき。事業者大会を通じて国交省に規制強化を働きかけてほしい」と訴えた。
 こうした発言を受けて、事業者大会では、あらかじめ用意した決議案に急遽「規制緩和の評価と必要な見直し」との文言を追加したようだ。
 政治主導を掲げる鳩山政権では、官僚ではなく、政治家が政策的な判断を行うことになっている。国土交通省で交通政策を担当する辻元清美副大臣は就任会見で、トラックの規制見直しについて「下請が重層化するなど厳しい状況であり、廃業も出ている。助けるところは助けるが、市場原理と規制、補助のバランスを取らないと、助けてばかりだと体質が弱くなってしまう。バランスを取ることが大事だ」との認識を示している。
 では現状のバランスはどうか。5台で参入してすぐに減車してしまう確信犯的な事業者の存在、5千社あるともいわれる社会保険等未加入事業者の存在を考えると、とても市場原理と規制のバランスがとれているとは思えない。

(日本流通新聞2009年10月19日付)