視界不良の暫定税率

来年度税制改正に向けた議論が活発化してきた。各省庁は10月30日に要望事項を取りまとめて政府税調に提出。税調では5日と6日に各省からのヒアリングを行う予定だ。
 国土交通省では、焦点となっていた運輸事業振興助成交付金の継続が要望事項に盛り込まれ、今後は税調での議論に委ねられることになった。
 交付金の継続は、民主党がマニフェストで軽油引取税の暫定税率廃止を掲げていることから、国交省としてもあえて要望するもので、全日本トラック協会、日本バス協会、交運労協が制度の継続を求めていることを受けての要望だ。
 ただ、交付金制度の議論の土台となる暫定税率の扱いが視界不良になってきた。
 政府税制調査会で議長役を務める峰崎副財務相が10月29日の税調終了後の記者会見で、暫定税率廃止について「竹を割ったように全部一気にできるかはこれからの議論だ」、「廃止するにしても今年全部廃止するのかということも出てくる。そういう議論も含めて総合的に検討していく」などと述べ、来年4月から暫定税率を全廃するのではなく、一部については来年度維持して段階的に廃止していくこともあり得るとの見通しを示した。
 暫定税率廃止に伴う代替財源として、環境税(温暖化対策税)の創設も国と地方で浮上しているが、これについては「環境税をどう仕組むかは相当時間をかけなければならない。国民に負担してもらうには相当説得力ある議論をする必要があるので、来年度からは困難じゃないか」と述べ、来年度からの導入は困難との見通しを示している。
 ただ、峰崎副財務相は「一度暫定税率を下げて、再び上げるとなると、やっかいな問題となる」とも述べており、来年度は暫定税率を維持したうえで再来年度以降環境税に衣替えするとの思惑も見える。
 政府税調が暫定税率の廃止先送りとその後の環境税化をもくろむ背景には、深刻な財源不足がある。マニフェストに盛り込まれた子ども手当や高校無償化などを実現するためには、巨額の財源が必要となる。
 一方で、景気の低迷で企業の法人税収が落ち込み、来年度は税収を上回る額の国債を発行しなければならない事態に陥る可能性が高い。
 なるほど地球環境対策は重要ではあるが、暫定税率廃止はマニフェストの目玉政策の1つのはずだ。それが、税率を維持したまま環境税という名前に変わるだけになるとすれば、自動車ユーザーの理解は到底得られまい。

(日本流通新聞2009年11月2日付)