環境税は看板の掛け替え

環境省が地球温暖化対策税(環境税)の具体案を発表した。ガソリン、軽油、灯油といった石油製品はもとより、天然ガス、LPG、石炭など全ての化石燃料に課税する新税で、05年度税制改正以来、同省としては6年越しの税制改正要望となる。
 自公政権の下では、産業界からの反発が強いこともあって、例えば09年度税制改正大綱では「納税者の理解と協力を得つつ、総合的に検討する」とされて見送られていた。
 ただ、今年は政権を奪取した民主党がマニフェスト(政権公約)で、ガソリン税や軽油引取税などの暫定税率の廃止と併せて、これらの税を将来的には地球温暖化対策税として一本化する方針を掲げ、さらに、子ども手当をはじめとする公約に掲げた政策を実現するための財源不足が露呈し、来年度からの前倒し導入が議論の俎上にのぼっている。
 環境省案によると、全ての化石燃料に輸入や採取の段階で課税し、さらにガソリン、軽油には製造時や販売時に上乗せ課税をするというものだ。ガソリン、軽油については二重課税といえる。ガソリンの税率は、原油輸入の段階で1㍑当たり2・8円が課税され、石油元売り事業者の精製段階で同17・3円が課税される。合計20・1円の税額で、現行の暫定税率25・1円と比較すれば1㍑当たり5円の減税になる。
 一方、軽油については、軽油引取税が地方財源であるため、国として税率は明示しなかったが、全国知事会が地方環境税の導入をすでに提案しており、環境省でも地方環境税の導入を想定して、今回の具体案を提示している。税率についてはガソリンに準じた検討が必要だ、としており、世帯当たり負担額の試算では現行の暫定税率1㍑当たり17・1円がそのまま環境税化された場合を想定して試算している。
 軽油に17・1円の地方環境税が課税された場合には、原油輸入時課税分の温暖化対策税2・8円が加算され、増税となる計算だ。
 いずれも、暫定税率から環境税への衣替えであり、「看板の掛け替えだ」との批判は免れないだろう。
 産業界は依然「環境目的に新たな負担を伴う新税を導入することは、エネルギー効率の悪い海外への生産移転を助長し、地球全体ではかえって温暖化が促進される」(日本経団連)などとして反対しており、トラック運送業界でも「単に名目のみを変え、自動車だけを対象とした議論には絶対に反対であり、受け入れられない」(全日本トラック協会)として反発を強めている。今週再開する政府税調の議論に注目したい。

(日本流通新聞2009年11月16日付)