交付金存廃、ヤマ場に

トラック、バス両業界に年間約200億円が支出されている運輸事業振興助成交付金の存廃が大きなヤマ場を迎えている。
 財務・総務両省は16日、各省に対して来年度税制改正要望項目の「ゼロ次査定」を通知した。税制改正大綱取りまとめに向けた、今後の議論のたたき台となるものだが、多くの項目を「認められない」とするなど厳しい査定となっているようだ。
 国土交通省は先月末、前政権がまとめた要望を53項目に絞り込んだうえで政府税調に提出したが、財務・総務両省はその半分以上の項目について「認められない」、「要望内容の抜本的見直しができなければ、認められない」と査定した。
 運輸事業振興助成交付金についてもかなり厳しい査定が行われた模様で、国交省と関連業界は危機感を募らせている。ただ、こうした厳しい査定に各省の反発は必至で、国土交通省も24日の審議で各項目の必要性を訴える見通し。なお予断を許さない情勢が続きそうだ。
 一方で、暫定税率廃止に向けた財源確保を巡り、財務・総務両省の対立が表面化してきた。18日の政府税調では、地方税の減収分8千億円の穴埋めを巡り、両省の間で議論があり、原口総務相が「財源がないなら、暫定税率廃止というマニフェストもあきらめざるを得ない」と財務省を牽制する場面があった。
 民主党では、マニフェスト策定の際、地方税の暫定税率廃止財源として、公共事業の直轄事業負担金廃止を当て込んでいたが、廃止は早くとも再来年度となる見通し。来年度は維持管理費負担分の廃止のみで、捻出される財源は1千億円程度にとどまるため、暫定税率の全廃には7千億円程度の財源が不足するという。
 総務省は①揮発油税と自動車重量税のうち、国から地方への配分額を増額する②国税である自動車重量税と地方税の自動車税を一本化し、地方の新税として「環境自動車税」を創設する③地方交付税交付金を増額する——の3つの方策を提案したが、来年度はどれも困難な情勢だ。
 95兆円という概算要求額に対し、税収は40兆円程度にとどまるのは必至で、しかも国債発行額を44兆円以下に抑えることは不可能に近い。
 原口総務相は「来年からの全廃は無理でしたと率直に言うべきだ」とまで言い放った。藤井財務相は終始発言しなかったが、峰崎副財務相は終了後の記者会見で、暫定税率廃止について「いつ、どれくらいかは今後の議論」と述べ、来年4月の全廃は困難との思いをにじませた。
 暫定税率廃止の帰趨が、交付金制度の行方を左右する可能性は大だ。

(日本流通新聞2009年11月23日付)