予断許さぬ交付金存廃
12月も後半に入り、本紙もこの号で年内最終の発行となる。
トラック運送業界では、昨年のような燃料高は一服した感があるが、肝心の荷動きが急激に悪化し、運賃水準の下落と相まって事業者にとっては厳しい年となった。
こうした厳しい経営環境のなかで、原価の把握や低減を通じて、車両1台当たりの利益向上を図るため、本紙では原価計算への取り組みも提唱してきた。関東、中部の各都県で「運送原価計算システム」の導入が進められ、多くの事業者のコスト意識が高まることが期待されている。
一方、政治・行政の分野では、政権交代という「革命」が起き、「コンクリートから人へ」というコンセプトに基づき、ダムの建設中止や道路整備の縮小といった公共事業の削減が一層進んだ。
体育館を4会場に仕切っての「事業仕分け」も連日メディアが大きく取り上げ、注目を集めた。
トラック運送業界では、民主党がマニフェストに掲げた、暫定税率の廃止、環境税の導入、高速道路の無料化などに関心が高まった。
ただ、政策の決定者不在とも思わせるような新内閣では、景気の低迷に伴う財源難もあって、なかなか政策が決まらないという事態が続いている。
トラック運送業界のみならず、国民の関心が高い、ガソリン税や軽油引取税の暫定税率廃止については、政府税調内でも「マニフェストの最重要項目であり、実現すべき」とする意見が大勢を占めているが、一部には段階的な廃止を提唱する意見もある。ただ、暫定税率を衣替えするかたちでの環境税(地球温暖化対策税)の同時導入には、「だまし討ちになる」と慎重な意見が少なくない。
このため、暫定税率は全廃するものの、それに変わる新税を導入し、税率の一部を維持するという案まで出てきた。まさに「迷走」である。
ただ、運輸事業振興助成交付金制度の存廃に大きく関わる問題のため、トラック業界、とくにトラック協会関係者にとっては複雑な思いだ。
その交付金制度も決着が延びている。民主党が県連経由で業界団体などの陳情を幹事長室に集約するという「幹事長室ルート」を設けて以降、各業界団体や自治体は党への活発な陳情を展開している。小沢氏の影響力の強さゆえだ。
交付金もその一つで、まさに政治マターとなっている。どのような決着となるのか、日々情勢は変化しており、なお予断を許さない。
(日本流通新聞2009年12月14日付)