最低台数 WG検討に期待

国土交通省のトラック産業将来ビジョン検討会に最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループ(WG)が設置され、最低車両台数引き上げに向けた検討が始まった。
 最低車両台数規制は、新規参入時に求められる事業規模基準で、以前は営業所が所在する市町村の人口規模などに応じて設定され、関東では首都圏営業区域で15台、東京特別区・横浜市・川崎市で10台、その他の都市では7台などとされていた。
 90年に事業免許制と運賃認可制の廃止を盛り込んだ物流2法が施行され、規制緩和の流れが加速した。最低車両台数規制については、96年から段階的に引き下げられ、2003年には営業区域の廃止に合わせて全国一律5台に緩和された。
 規制緩和により、事業者数は90年の1・6倍に増加し、10台以下の事業者が占める割合は96年の43・2%から08年には56・5%へと1・3倍に増えた。
 この結果、取引の多層化と事業者間の過当競争が進み、運賃・料金の下落により厳しい経営を余儀なくされ、法令順守や安全・労働環境などの面で問題のある不適正事業者が増加するなど、トラック輸送の産業構造が大きく変化した。
 こうした変化を背景に、業界内から「行き過ぎた規制緩和の見直し」を求める声が高まった。過日横浜市で開催された全国事業者大会でも「ひ孫請けの運賃は3分の1だ。最低車両台数を10台にすべき」などと規制強化を求める声が相次いだ。
 WGは、こうした事業者の声に応えるために設置されたもので、13日の初会合ではトラック事業者委員から「安全確保、法令順守を行って健全経営するには20台程度の規模が必要」との発言もあった。
 WG初会合で国交省側は、「仮に引き上げた場合、新規参入が抑制されたり、小規模事業者間の合併・M&Aが促進される副次的効果が出てくる可能性があり、その結果、多層構造の改善に貢献し、運賃相場が引き締まる可能性がある」との認識を示し注目された。
 最低車両台数規制は、「安全確保のための自主管理体制を事業者が確立・維持するうえで必要な規模」との観点で義務付けられているが、引き上げ検討に当たり同省では、安全の確保、適正な労働環境の維持を基本的な視座とし、経営の視点も組み合わせて論理構成する考えだ。8000社を対象としたアンケート調査を行って関連データを収集し、来年夏を目途に結論を出す。
 悪貨が良貨を駆逐するような業界の現状を1日も早く改めるためにもWGの今後の検討に期待したい。

(日本流通新聞2010年10月18日付)