日本流通新聞1月31日付紙面から社説:春闘を問題解決の場にトラック運送の2011年春季労使交渉(春闘)が事実上スタートした。運輸労連は27日、中央委員会で「組合員一人平均6000円中心とする」要求額を決めた。 要求額「6000円」の根拠は、所定内労働時間賃金(23万9244円)をベースとして、定期昇給(相当)分の1・5%に、格差是正分を含めた賃金水準の復元分の1%をプラスした2・5%の賃上げだ。 賃上げ「6000円」水準は現在の経営環境を考えれば、中小にとっては、ハードルの高い要求になろう。日本経済は08年9月のリーマンショック後の大幅な景気悪化を経て、09年春頃から持ち直してきた。その結果、10年春闘は、運輸労連全体の妥結額が1001円となった。2年ぶりの1000円台である。 ただ、他産業と異なるのは定期昇給の有無である。例年、春闘時期になると、マスコミは電機や自動車大手などが「賃上げ断念」「ベアなし」を報道するが、定期昇給や賃金カーブ維持分は平均5000円台だ。 運輸労連が傘下の123組合に定昇制度の有無を調査したところ、「あり」62組合、「なし」59組合、「記載なし」2組合だった。「あり」50組合の定昇の平均は1561円で、最高額は5861円、最低額は「58円」だった。 近年の賃上げ妥結額は、91年春闘の1万256円をピークに低下し続けており、99年春闘以降は1000円台まで落ち込んでいる。 要因は、定昇制度のある組合でも経済情勢の変化、規制緩和以降の激しい企業間競争の中で、年功要素のある賃金体系から、仕事給や歩合給の割合が高い体系への改定などがあげられる。 トラック運送の今春闘は、労使共同の問題解決の場として位置づけて欲しい。労使共通の問題としては、例えば、規制緩和ズタズタにされた運賃・料金制度、全産業のなかで低位におかれるトラック運送の賃金、そして労働条件などがある。 厚労省(毎月勤労統計)によると、道路貨物運送業(トラック運送業)10年6月の賃金支給総額は29万8633円と、全産業平均(36万57円)の82・9%の水準(前年は85・1%)である。トラック運送の1時間あたり賃金は1498円で、全産業(2145円)の7割に満たない水準だ。 物流というインフラを担うトラック運送は、他産業より多く働いても、なお全産業に届かないのが実態だ。11年春闘は、ぜひ労使共同で、従業員にしわ寄せしない原価を賄う適正運賃の収受、魅力ある産業・職場への取り組みを行う場にして欲しい。
|
|