社説:高速無料化 トラック誘導を政策理念に
国土交通省が6月から開始する来年度の高速道路無料化社会実験計画を発表した。
無料化路線として6区間329㌔㍍を追加するとともに、夜間の大型車に限って無料化する実験も新たに実施する。今年度無料化した区間は、沖縄道を除き原則としてそのまま無料化を継続する。
夜間の無料化は、中型車以上のトラック、バスに適用され、対象区間は北陸道全線や磐越道、東北道の一部など計約1500㌔㍍に及ぶ。
国交省が計画内容を説明した9日の民主党国土交通部門会議では、「モーダルシフトに逆行する」などとする意見が相次いだが、同会議後の記者会見で池口修次副国交相は「トラックかJRか、フェリーかを選択する理由は、必ずしも料金だけではない」とし、さらに「物流コスト引き下げ圧力が強いので、夜間に一般道を走るトラックは相当数あると思う。無料になれば高速道路を走る。トラックが一般道を走る際の事故のリスク、騒音などを考えると、高速道路に誘導するメリットは大きい」と指摘し、経済的なメリットだけでなく、社会的なメリットが大きい点を強調した。
全日本トラック協会も今回の社会実験計画に対し「トラックを高速道路に誘導することにより、一般道の安全性が高まり、沿道住民の騒音や振動対策にもなるなど社会的なメリットが大きい」とコメントしており、それ以外にもCO2排出削減効果、ドライバーの労働環境改善効果が期待できると歓迎している。
本紙も従来から、高速道路料金の設定に当たっては、一般道の安全確保の観点からトラックを高速道路に誘導するような料金政策を採用すべきと主張し続けてきた。今回の池口副大臣、全ト協のコメントには全く同感である。
ドライバーの間で「木曽高速」と呼ばれる一般道がある。名古屋から長野に至る国道19号中津川〜塩尻間の通称で、トラックが多く毎日のように事故が起きるという。平均速度は時速70㌔以上で夜間は90㌔以上にもなることからこのような通称名が付けられたという。他にも同様の一般道の例は少なくなく、沿道住民の安全や安眠が脅かされている。
経営環境が厳しさを増す運送事業者は、コストに敏感だ。とくに帰り荷が空車の場合など高速料金の負担を避けるケースが多い。
こうしたトラックを高速道路に誘導する政策であれば、高速道路会社の減収にはならず、その社会的な効用も大きい。このような考え方を高速道路無料化政策の基本理念に位置づけるべきではないか。