社説:適正取引は業界発展の原点
国土交通省が3月末に、およそ2年ぶりにトラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議を開催する。
同会議は、燃料価格が高騰していた2008年5月に設置されたもので、とくに燃料価格上昇分を運賃に転嫁するための燃料サーチャージ制の導入、普及が当時の最大の課題だった。
荷主、元請、下請というトラック輸送に係わる関係者が一堂に会し、相互に信頼感を醸成することが眼目で、当時同省が策定した燃料サーチャージ緊急ガイドラインと下請・荷主適正取引推進ガイドラインという2つのガイドラインの順守に向けて、意見交換などが行われた。
燃料価格が落ち着きを見せ始めた09年以降は、個別課題の抽出とその解決に向けた検討が中心となり、配送センターでのトラック待機時間短縮などがテーマとなった。
2009年6月以来の開催となる今回の会議では、下請・荷主適正取引推進ガイドラインの順守状況などを荷主、トラック事業者双方に確認することが柱だ。また、独禁法の改正で優越的地位の濫用行為が課徴金納付命令の対象となったことを受けて、公正取引委員会が昨年11月に策定した優越的地位濫用のガイドラインについても公取委が説明するという。
元請から下請までの重層構造が進展したトラック運送業界にとって、「適正取引」は業界が健全に発展するための原点といえる。国交省が08年3月にまとめた下請・荷主適正取引推進ガイドラインでは、元請から5次、6次以降の下請事業者が実運送を行うことがあるとし、「荷主から最終的な実運送事業者までの契約、輸送責任が輻輳している」と指摘。さらに「いわゆる『水屋業』および実運送を行わずコスト管理のみを行う元請事業者の存在が市場構造をより複雑なものとしている」との問題意識を示している。
同ガイドラインではまた、「不適正な取引を防止するためには、適正取引のルールを関係者が順守するとともに、望ましい取引形態についての知識を共有し、その導入促進を連携して図っていくことが重要だ」とトラック運送業で適正取引推進ガイドラインを策定する意義を強調している。
2年ぶりに再開する適正取引推進パートナーシップ会議では、そのルールが関係者により順守されているかどうかが確認される。
「適正取引」というトラック輸送ビジネスの原点に立ち返り、荷主、元請、下請の各関係者がそれぞれの役割を果たして健全な競争環境を築いてほしい。