社説:軽油高騰
運賃転嫁へ覚悟必要
死者・行方不明合わせて3万人に迫る未曾有の大災害発生から3週間が経過した。避難者の方々は今もなお食糧不足に見舞われ、集団感染などの衛生問題も深刻化している。1日も早い復旧・復興が待たれる。
トラック運送業界では、なお救援物資の緊急輸送に業界をあげて取り組んでいる。政府ルートと地方自治体ルート合わせた出動台数は3800台に迫り、政府ルートで輸送した食料品は1115万食に及ぶ。
被災地での物資の末端輸送については、国土交通省がこれまでに岩手、宮城、福島、茨城4県の被災地に計13名の「物流専門家」を送り込んで物資の仕分けや輸送指示に当たっているほか、ヤマト運輸や佐川急便など大手宅配事業者もボランタリー覚悟で避難所までの「ラストワンマイル」輸送に取り組んでいる。
震災直後の燃料不足については、日貨協連の調査結果によると、スタンド給油で約5割のトラック運送事業者が「供給制限があった」と答え、中部以北に限るとこれが6割となるなど、東日本を中心に燃料が不足していた実態を裏付けた。
その後、在庫の取り崩しや西日本からの転送、製油所や油槽所の復旧などによって需給は徐々に正常化しつつある。被災地ではなお供給不足が続くが、関東圏向けの出荷量は平年並みに回復しているようだ。
供給不足が落ち着いたと思ったのも束の間、今度は価格の問題が出てきた。JX日鉱日石エネルギーは3月の軽油卸値を1リットル当たり前月比8.6円値上げすると発表。出光興産も同8.3円引き上げると表明した。石油販売会社と都内のトラック運送事業者によるインタンク価格交渉では、販売会社側が8〜9円の値上げを提示し、これに対してトラック事業者側は7円台を主張。7〜8円台を巡っての攻防が繰り広げられている模様だ。
大幅値上げは、2月下旬以降、中東情勢の緊迫化などを背景に原油価格が急騰したためだが、大幅な値上げにトラック事業者側は抵抗しており、交渉は難航が見込まれる。
さらに4月もJX日鉱日石が3月比4.8円のコストアップになると発表するなど4円程度の値上がりが見込まれ、2ヵ月で10円以上の値上がりとなることは必至の情勢だ。
全ト協の燃料価格調査では2月のインタンク価格が消費税抜きで97.82円となっており、3月で100円を突破し、4月には110円に迫ることになる。
燃料サーチャージ制の導入も含め、運賃への転嫁が大きな経営課題となってきた。荷主に理解を求める覚悟が必要だ。