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日本流通新聞5月23日付紙面から

社説:驚いてばかりもいられない

 東日本大震災の発生から2ヵ月強が経過し、自動車運送事業関係の被災状況も徐々に明らかになってきた。国土交通省がまとめた東北地方のトラック事業者被災状況によると、死者・行方不明は237人、被災車両は6526台に達した。
 被災車両数が全ト協集計と大きく異なるのは、未だに連絡が取れない事業者126社が保有する車両数1690台を被災車両数に含めているためだ。タクシーやバスと比較して、事業者数そのものが多いトラックの被害が突出している。
 7000台近いトラック車両が被災したことにショックを受けたのは本紙だけではないだろう。ただ、驚いてばかりもいられない。今後は被災地の復旧から復興に焦点が移る。
 農業、漁業などの1次産業、企業の工場など2次産業の復興がまず焦点となるが、第3次産業である公共交通や物流の再生に向けた支援について、国交省の中田自動車交通局長は「今後の地域のまちづくりの動きもにらみながら検討したい」と話している。
 まちづくりや産業構造の姿が明らかになり、それに伴う輸送需要がはっきりしないと明確な支援策を打ち出せないというわけだ。
 ただ、地域経済の復興に向けて中小企業の再生がカギを握ることは間違いない。前経産相でもある大畠国交相は「被災地の中小企業の再建が地域経済にとって非常に大事だ」と述べ、再建意志のある中小企業を国がバックアップする体制を作るべきだとの考えを示している。
 運送事業の被災状況が明らかになる一方で、震災による景気の悪化も数字で示されはじめた。
 内閣府が発表した1-3月期のGDP速報値は年率換算で3.7%減と2期連続でマイナスになった。
 全ト協がまとめた1-3月期の景況感調査でも、判断指標は24ポイント悪化のマイナス59となり、4-6月もさらに29ポイント悪化してマイナス88まで落ち込むと見られている。今回の調査は、東北の事業者が対象になっていないため、実勢はさらに悪化している可能性が高い。
 ただ、これもただ驚いているだけではしょうがない。景気は悪化したが、リーマンショックのような世界的、構造的な要因があるわけではない。生産が縮小していた自動車メーカーも回復を前倒ししており、復興需要で国内輸送需要の回復も見込まれ、夏場以降に期待がかかる。
 また、今年の夏期繁忙期では車両不足が懸念されるため、国交省が初めてレンタカーの使用を認めることを決めた。荷動き回復の際には、適正運賃収受への取り組みも肝要だ。

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