社説:やはり問題は下請多層構造だ
国土交通省が2年ぶりにトラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議を開催した。
軽油価格が高騰した2008年5月に、荷主、元請、下請間での不適正な取引を防止することを目的として設置された会議だ。
これまでの意見・情報交換型の会議から、課題抽出と解決策の提示へとその機能を変え、1年間かけてとりまとめを行うことになった。委員も各企業の代表ではなく各業界団体の代表として参画し、会議でまとめられた成果を各団体でフィードバックしてもらうことにした。
一方、会議では、委員全員が発言したが、荷主代表委員とトラック事業者代表委員の間で議論はかみ合わず、荷主委員のなかからは「パートナーシップは重要だが、トラックは下請構造が複雑で、関係性を作ること自体が困難だ」といった発言まで飛び出した。
この委員は「大手のAEO企業でさえ実運送の管理ができていない。それほど距離がある」と述べ、数次にわたる下請構造により、荷主から実運送を行う事業者の顔が見えない点をパートナーシップ構築に当たっての障害としてあげた。元請トラック事業者代表の委員も「トラック運送業界の最大の問題はあまりにも事業者数が多いことだ」と断言した。
図らずも、規制緩和により進展した下請多層構造が現下のトラック運送業界の問題点として再認識されたかたちだ。
国土交通省の自動車交通局長が、震災対応で先送りされていたトラック将来ビジョン検討会ワーキンググループを今夏に再開する考えを明らかにした。WGでは、最低車両台数の見直しと運賃料金制度のあり方などが論点となっている。とくに、参入時の最低車両台数については、業界内でも引き上げを求める声が強く、WGの議論に期待がかかっていたが、大震災の発生で多くのトラック事業者も被災し、一時的な供給不足が起きるなかで規制強化の議論がしにくい状況になっていた。
ただ、先日のパートナーシップ会議で指摘のあった「ハンドル時間がオーバーするような仕事はさらに下請に回す」というように、多層化の進展は実運送の労働強化を招いている可能性も高い。労働法規違反となるような仕事を下請に押しつけるようなことがまかり通っていたのでは、業界の労働条件は一向に改善されない。国土交通省は、速やかに将来ビジョンWGを再開し、こうした取引の実態を把握したうえで、結果として多層化に歯止めがかかるであろう、最低車両台数の見直しに向けた検討を進めるべきだ。