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日本流通新聞7月4日付紙面から

社説:なぜ、トラックに過労死が多い

 厚生労働省がまとめた2010年度の「過労死」など、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況(業種別・中分類)によると、道路貨物運送業(トラック)の労災補償件数は108件(前年度113件)、支給決定(認定)件数が57件(同65件)と、前年度を下回った。
 ただ、請求件数、認定件数ともに業種別ではダントツの多さだ。請求件数では1位の道路貨物運送業108件に対し、2位の建設業・総合工事業が55件で約半分。認定件数は1位の道路貨物運送業57件に対し、2位の道路旅客運送業が17件と3分の1以下である。
 くも膜下出血などの「脳血管疾患」や心筋梗塞などの「心臓疾患」は、過重な仕事が原因で発症する場合があり、「過労死」とも呼ばれている。
 職場生活での強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は6割程度と高く、残念ながら「過労死」などの労災申請件数や認定件数において、トラック運送業は全業種の中で最も多い業種だ。
 いま、トラック運送事業者・業界が持っている危機感は、将来に向けて確実に少子高齢化社会、若年層労働者不足の問題だ。これに加えて、中型自動車運転免許などの導入で、中高年齢者へのシフトなどによる労働災害が増加傾向にある。
 こうした点から、その対策として「より良い教育」をし、その成果として各企業が「より良い職場環境づくり」、「より良い社員を確保・育成」できる力をつけることが必要だ。
 業界でも、中高年齢者向けの「KY(危険予知)」や職場の危険性の事前評価(リスクアセスメント)による安全管理に関する教育を積極的に実施し、努力していることは承知している。
 「安全・安心な輸送」サービスを提供するトラック運送の現場が危険では、事業者・業界の社会的地位の向上は望めない。
 若年労働者を確保し、優秀な人材を確保するためには、他産業並みの労働環境や労働条件、そして職場環境の改善が不可欠であろう。
 「物流は最終アンカー。アンカーは優秀な人が担っており、物流は優秀でなければならない」と、物流の重要性を強調したカリスマ経営者がいた。その通りだと思う。
 最終アンカーとなるトラック運送業が「過労死」ダントツ1位は、異常である。公正な取引条件のもとにおいて、「過労死」はありえない。
 ちなみに2010年度「過労死」など補償状況で、最も多かった職種(中分類)は、自動車運転従事者で請求件数139件、認定件数65件で、いずれもダントツだった。

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