社説:海コン法案 早期の再提出を期待
海上コンテナ陸上輸送の安全確保に向けた国際ルール作りが始まった。
今月6日〜7日にかけスイス・ジュネーブで国際3団体の共催による専門家会合が開かれ、議論を開始したもので、日本からは国土交通省自動車局の担当官らが出席し、国内では依然横転事故が多発しており、その原因として偏過重での輸送や、運転者が重量などの情報を把握していない点などを指摘したという。
そのうえで日本側は、発荷主を含むコンテナ輸送に関わるサプライチェーン関係者の役割と責任を明確化し、コンテナ内容物の品目や重量といった情報を末端のトラック運転者まで伝達する必要がある、と主張したようだ。
専門家会合は来年4月に第2回会議を開くが、日本側はそこで新ルールを提案する方針だ。国際ルール作りが始まったことで、昨年末の臨時国会で廃案となってしまった海上コンテナ運送安全確保法案の再提出に向け弾みがつくと期待されている。
海コン法案は、国内の受荷主等に対し、コンテナの内容物や重量、積み付け状態といったコンテナ情報をトラック運送事業者と運転者などに伝達することを義務付けるほか、過積載や偏過重などコンテナが不適切な状態にある場合には、受荷主に対しこれを是正することを義務付けるもので、受荷主が海外の発荷主からコンテナの重量情報を取得できなかった場合には、受荷主に重量測定を義務付けるという画期的な内容だ。
前原誠司元国土交通相の肝いりで昨年の通常国会に提出されたが、経済界では「港が大混乱に陥り、国際競争力が低下する」などと懸念する声が強く、さらに国内法のために肝心の海外の発荷主が対象とならず、国内の受荷主だけが負担を強いられる、との不満も根強かった。
国際ルールづくりが進めば、海外の発荷主にも情報伝達などを要請できるようになるため、法案の再提出、成立に向けて大きく前進することになる。
20日に招集された臨時国会は、会期も短く、第3次補正予算案をはじめとする震災の復旧・復興関連法案の審議が最優先されるため、海コン法案が提出される可能性は高くないかもしれない。ただ、宿利国土交通事務次官は「海上コンテナの事故防止、安全確保は極めて重要な問題。機会が出てくれば審議していただくことを希望している」と述べ、今後も国会での審議を求めていく考えを示している。
国際ルール作りの動きと平行して、法案の早期再提出、成立を期待したい。