社説:「ガス黄金時代」は来るか?
IEA(国際エネルギー機関)は今年6月、「Are we entering a golden age of gas?(ガス黄金時代は来るか?)」と題するレポートを発表した。原発の役割の変化による天然ガスの需要増、シェールガスをはじめとする非在来型ガスの供給拡大などを前提に、2035年の世界のガス需要は2008年の1.6倍に増えるとシナリオを描いた。
天然ガス自動車については、各国政府の支援拡大を前提に、2035年の普及台数をこれまでの3000万台から7000万台へと大幅に上方修正した。
シェールガス革命が起きた米国では、ガス価格の石油連動傾向が弱まり、天然ガス価格が低下傾向にある。欧州には、これまで米国向けだったカタールLNGが流入し、ロシアからのガスパイプライン依存度が低下した。震災の影響による天然ガス価格の高騰は現時点で見られず、今後も石油に対する価格優位性を維持する見込みだ。
世界の天然ガス自動車普及台数は1300万台超で、環境対応車の主流と位置づけられている。11万台超が普及する米国では、オバマ大統領が今年3月、天然ガスを中心とする国内燃料の増産、天然ガスやバイオ燃料の使用拡大、自動車燃費向上などにより、2025年までに石油輸入量を3分の1削減することを目標とするエネルギー政策を発表するとともに、4月には天然ガス自動車普及促進法案を議会に提出した。
一方、国内を見ると、2010年度の普及台数は4万429台と4万台を突破し、右肩上がりで増加を続けている。海外では乗用車やバスが普及しているのに対し、日本では貨物車を中心に普及が進んでいる。
乗用車の分野では、電気自動車やハイブリッド車が環境対応車として脚光を浴びているが、トラック分野ではCNG(圧縮天然ガス)車に対する評価がディーゼルハイブリッドトラックに対するそれを大きく上回っており、事実上CNG車しかないというのが実情だ。
CNG車がハイブリッド車に唯一劣る点がスタンドだ。そのスタンドの設置に対する補助金が今年度で打ち切られることがわかった。
国内の天然ガススタンド数は2010年度で333ヵ所だが、SSそのものの減少により小幅ではあるが2年連続で減少している。
運送事業者に導入意欲があっても、近くにスタンドがなければ導入できない。世界的には、「ガス黄金時代」を迎えようというときに、スタンド整備に対する補助金が打ち切られることに違和感をおぼえざるを得ない。