社説:理のない税は廃止すべし
2012年度税制改正審議がヤマ場を迎えている。
自動車関連業界にとっての最大の焦点は、車体課税の抜本的見直しだが、財政難を背景に税務当局である財務、総務両省は消費税引き上げ時まで先送りする意向を示しており、関連業界や経済産業省が巻き返しを図っている。
15日の政府税調では車体課税を巡って2回目の集中審議が行われたが、税務当局は「財政は極めて厳しい状況。見合い財源なしに減税することは適当でない」(三谷光男財務政務官)、「自動車取得税は地域主権のシンボル的な税。代替財源の提示なしに廃止を議論することは不可能」(福田昭夫総務政務官)などと代替財源の提示を求めた。
これに対し牧野聖修経済産業副大臣は「一度空洞化すると二度と国内には戻らない。1日も早く政治的メッセージを出すべきだ」と食い下がった。
中野寛成党税調会長代行は、「『取得税廃止を検討』との朝刊を見てびっくりしたが、間違いではなく、なぜ漏れたのかという気持ちだ。取得税の廃止は当然だが、時期も含めて検討したい」と自動車取得税については廃止の方針を打ち出すものの、実施時期については先送りも示唆。福田総務政務官も「存廃を議論するのであれば、消費税引き上げの時だ」と主張した。
2日後の17日に議員会館内で開かれた、民主党経済産業部門会議の自動車戦略ワーキングチーム(WT、増子輝彦座長)には70名を超える議員が集まり、さながら「決起集会」の様相を呈した。
7県知事連名による緊急声明を出した愛知県の大村秀章知事も出席し、「損して得取れだ。地方税を預かる立場だが、あえて地域が活性化して雇用が生まれる方がプラスと判断した」と知事として地方税である自動車取得税の廃止を訴えた。
出席した議員からは「税は理屈だ。税の根拠が無いものは廃止すべき」(大久保勉党財務金融部門会議座長)などと即時廃止を求める発言が相次ぎ、会議の最後には「実現するぞ」三唱で気勢を上げた。
一般財源化により課税根拠を失っている点は、車体課税も燃料課税も同様だ。自動車ユーザー、とくに輸送業界にとっては燃料課税の重税感が強い。一方で、財務省は中期的に車体課税と燃料課税を再編する考えを示しており、車体課税を軽減する場合には燃料課税を強化する考えも示している。課税根拠がないところへ増税とは、真逆の考え方であり、到底受け入れようがない。理のない税は直ちに廃止すべきだ。