社説:英知集めて荒波乗り切れ
2012年の幕が開けた。
マグニチュード9.0というわが国での地震観測史上最大の大地震に見舞われた東日本が、復興に向けて本格的に動き出す。
東日本大震災の被害状況は、2011年12月21日現在で死者1万5842人、行方不明3475人、負傷者5890人。津波による浸水面積は561平方㌔㍍におよぶ未曾有の大災害だった。
避難者数は、震災発生直後の3月14日時点で47万5000人に達し、阪神淡路大震災の最大時の1.5倍に及んだ。避難所設置数は発災から2ヵ月後の5月11日時点で約2400ヵ所に上り、発災から7ヵ月を経た10月6日時点でも約4400人の避難者が避難生活を強いられるなど、避難も長期に及んでいる。
トラック運送業界では、3月11日の発災直後に全日本トラック協会と47都道府県トラック協会が緊急災害対策本部をそれぞれ立ち上げ、救援物資の緊急輸送を展開した。政府による全日本トラック協会経由での手配台数は1925台、各県からの要請で各都道府県トラック協会が手配した台数は8702台におよび、合わせて1万台を超える営業用トラックが被災地への物資輸送に貢献。阪神淡路大震災時の6808台を上回る過去最大規模となった。
発災直後は食料、飲料水、毛布といった物資が中心だったが、その後発電機やストーブ、簡易トイレ、ラジオ、懐中電灯など要請される品目も変わっていった。
一方で、全国から次々と集まる救援物資が物資集積所に滞留し、肝心の被災者までなかなか届かないという事態も起きた。このため国土交通省は民間物流企業の実務者を「物流専門家」として現地に派遣し、物資の在庫管理や避難所等への配送など物流のオペレーションを支援した。
大手宅配便企業もこうした末端配送に協力を惜しまなかった。ヤマト運輸は岩手、宮城、福島3県に「救援物資輸送協力隊」を組織し、被災地の避難所などに物資を宅配する業務に自発的に協力した。自らも被災した現地従業員の「歩いてでも届けたい」という強い責任感が東京の本社を動かした。
佐川急便も宮城県と同県トラック協会の要請を受け、県の物資集積所から市町村の集積所への拠点間輸送と避難所までの宅配を実施した。
大災害時の支援物資物流の経験を教訓として、国交省が12月にまとめた支援物資物流システムについての報告書では、早期の段階から物資の物流オペレーションにノウハウを持つ民間物流事業者や団体が参加できる仕組みをあらかじめ作っておくべきと提言した。
大震災時の緊急輸送で存在感を高めたトラック輸送だが、その経営環境は厳しさを増している。歴史的円高を背景に国内産業の空洞化が不可避の情勢となるなか、中小企業の海外進出も現実味を帯びてくる。また、増え続ける事業者数を背景に依然として競争環境は厳しく、不適格事業者排除のための規制見直しも求められよう。
今後東北地方では復興の本格化が見込まれ、そこでもトラック輸送が大きな役割を発揮することが期待されている。日本経済の大動脈を持続可能なものとするためにも、関係者の英知を集めて今年も荒波を乗り切りたい。