社説:運行記録計 総合的、長期的視点で
営業用トラックへの運行記録計装着義務付け範囲拡大への反発が広がっている。東京都トラック協会が中心となり関東ブロックのトラック協会に呼びかけて行っている反対署名は6000に迫る勢いだという。
運行記録計は、自動車の速度、走行時間、走行距離などが記録される装置で、運行管理のための基礎的なツールだ。現在は車両総重量8㌧超の大型トラックに装着が義務付けられている。
国土交通省は当初、この義務付け範囲を車両総重量7t以上8t未満へ拡大することを検討していたが、その後の調査でより小さい営業用トラックの死亡・重傷事故発生率が高いことなどが明らかになったため、車両総重量3.5t以上または最大積載量1t以上の中小型トラックにまで一気に拡大する案を提示した。
運賃水準が長期にわたり低迷する一方で、相次ぐ環境・安全規制への対応を迫られるトラック運送業界は、予想を上回る範囲拡大案に反発し、12月14日には関東トラック協会が国土交通省に今回の拡大を見合わせるよう要望した。
業界の反発が広がっている背景には、費用負担が増えることはもちろん、装置の装着義務付けありきという国交省側の姿勢がある、と多くの業界関係者は声をそろえる。
同じく装着義務づけ方針が打ち出された大型トラックの衝突被害軽減ブレーキとは異なり、装着しただけでは効果が発揮できないためだ。
運行記録計の中小型トラックへの装着義務付けに当たり国交省では、義務付ける記録計をデジタル式に限る考えだ。デジタル式の方がデータの分析が容易なためだが、膨大な運行データを解析する作業は小規模事業者にとって大きな負担となる。「パソコンさえない事業者もいる」(東ト協幹部)のが実情で、果たしてデジタコを十分活用できるのかという懸念が残る。
デジタコの活用により、事故防止や燃費向上に大きな効果があることは論をまたない。ただ、業界の大半を占める小規模事業者が実効性のある形で十分活用できるようにするためには、長期的な視点が必要ではないか。
義務付けに至るまでの間には、補助金や優遇税制といったインセンティブも不可欠だ。国交省は数億円規模の補助を行っているが、毎年申請受付初日でパンクしてしまい、とても十分な額とは言い難い。
デジタコの義務付け拡大に当たっては、事業者に対する十分なインセンティブ、小規模事業者等に対する活用指導など、総合的、長期的なロードマップが欠かせまい。