社説:運行記録計 きめ細かい支援・指導を
2011年の営業用トラック(軽貨物除く)による死亡事故件数が前の年より8.8%少ない344件となったことが警察庁の統計でわかった。2001年の656件と比べ47.6%減で、10年間で半減したという。
全死亡事故件数も10年間で46.8%減少しており、死亡事故半減は全体の傾向でもあるが、業界の地道な事故防止への努力が着実に実を結んでいる格好だ。
営業用トラックの死亡事故件数を車種別に見ると、大型貨物が3.9%減の197件、中型貨物が11.4%減の132件、普通貨物が34.8%減の15件といずれも減少しているが、これらの内数であるトレーラーの死亡事故は32.0%増の33件と増えている。
営業用トラックの死亡事故件数は一昨年増加に転じていたため、再び減少に転じたことで関係者は胸をなで下ろしていることだろう。一昨年の2010年は、国交省統計による事業用自動車重大事故件数も4年ぶりに増加に転じている。トラック関与の重大事故も5.9%増の1993件と増加していた。
一方で、営業用トラックの安全対策強化の一環として、運行記録計の装着義務付け範囲拡大が検討され、波紋を広げている。国土交通省が、すでに義務付けられている大型車に加えて、中小型トラックまで装着を義務化する方針を示したのに対し、関東と近畿のトラック協会が反対署名や見合わせを求める要望書を提出するなど態度を硬化させている。
全日本トラック協会はトラック業界の考え方をまとめ、改めて国土交通省に提出したが、意見では現状のトラック運送業界の運行管理体制を検証したうえで、適切な運行管理体制を構築することが先決だとし、体制を構築したうえで具体的な拡大範囲などの議論をすべきだと主張した。
国交省は、2〜3年後を目途に新車への装着を義務付けるとともに新規参入事業者の車両と既存事業者の増車車両を対象とする素案を示し、その他の使用過程車については当面適用しないなど一定の配慮を見せたが、全ト協意見では具体的な対象範囲や実施時期などに一切言及しなかった。
行政と業界はさらなる死者半減に向けて連携して取り組むべきだが、拙速に、守れない規制を定めたのでは法令違反事業者を増やすだけということにもなりかねない。業界の過半を占める小規模事業者にまで適切な運行管理体制を築くためには、きめ細かい支援・指導と時間軸を念頭に置いた検討が欠かせまい。