社説:「北風政策」より「太陽政策」で
国土交通省が検討している、営業用トラックへの運行記録計装着義務付け範囲拡大を巡り、国交省側とトラック運送業界側の主張が対立するなか、東京都トラック協会は支部長会に運行記録計メーカーの担当者を招き、改めてデジタル式、アナログ式運行記録計のメリット、デメリットなどについて説明を聞いた。
メーカー側からは「デジタコの普及には少なくとも10年、長くて20年はかかる」、「5台、10台の会社はアナログ式でも十分管理できる」などと業界の実態を踏まえた見解が示され、説明を受けた業界側も「(義務付け拡大は)改めて時期尚早だと感じた」と今後も反対の姿勢を貫く考えを示した。
そもそも運行記録計の義務付け拡大は、国交省が策定した事業用自動車総合安全プラン2009に盛り込まれていた施策だが、安全プランでは、長距離運転が常態化しやすい、例えば車両総重量7t以上8t未満への拡大を検討するとされ、さらなる範囲拡大は、中長期的課題と位置づけられていた。
ところが、国交省は車両総重量3.5t以上または最大積載量1t以上の中小型トラックまで一気に義務付け範囲を拡大し、しかもデジタル式記録計を義務化する方針を示したため、業界側が反発した。
国交省は使用過程車には当面適用せず、2〜3年後を目途に新車のほか新規参入事業者の車両と既存事業者の増車車両に限って義務付ける案を提示したが、業界側の態度は硬く、議論は進展していない。
この間、業界側は反対署名活動を展開するなど反発を強め、国交省は3月21日に予定していた第3回検討会の延期を余儀なくされた。
デジタル式運行記録計は、データ解析が正確に行えるうえ、安全運転、省燃費運転の管理・指導もパソコンを利用して効率的に行えるなどの利点があり、一定規模以上の事業者にとっては、その投資を惜しまなければ効果的な運行管理を可能とするツールだ。
ただ、5台、10台といった業界の多くを占める小規模事業者にとってはどうだろう。メーカー担当者が指摘したように、小規模事業者にとってはアナログ式のほうが低コストで効率的に管理が行えるのではないか。こうした事業者にまで闇雲に義務付けを拡大すれば、むしろ法令違反事業者を増やすだけということにもなりかねない。
国交省は4月以降、決着を急ぐ構えだが、義務付けありきの「北風政策」ではなく、時間をかけて事業者の運行管理スキルを向上させる「太陽政策」を採るべきではないか。