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日本流通新聞5月28日付紙面から

社説:事業許可にもっと「重み」を

 関越道での高速ツアーバス事故を機に、行き過ぎた規制緩和を見直すべきだという機運が高まっている。
 18日の衆院国土交通委員会に参考人として出席した安部誠治関西大学社会安全学部教授は「競争を否定すべきではないが、労働コストが高い運輸事業で過当競争が起きると労働コストと車両コストにしわ寄せが行く」と述べ、「行政コストをかけずに効果を上げるには、許可要件を見直し、参入のハードルを上げることを検討すべきだ」と参入基準を強化すべきとの考えを示した。
 25日の民主党国土交通・厚生労働部門合同会議でヒアリングに応じた交通ジャーナリストの鈴木文彦氏も「労働集約産業のため、まず人件費を削る。拘束時間が長いのに所得が低く、良質な労働力を確保できない。交通機関の安全確保には良質な人材や教育などコストがかかる。安ければ良いという風潮は輸送産業では疑問符をつけるべき」と指摘し、やはり同様に「許可基準を厳格化し、許可後一定年数後に再チェックする必要がある」と述べた。
 国土交通省は「厳罰化も含めて実効性がある事後チェックをしっかりやりたい」(中田自動車局長)と事後チェックを強調するが、320人の監査要員でトラック、バス、タクシー合わせて約12万社を監視するのはどう考えても困難だ。経済的規制緩和で脅かされる安全性の確保を事後チェックで担保するという考え方はすでに破綻しているのではないか。
 21日の国交省政務2役による公共交通安全対策検討チームでも、津島政務官が「市場に入ってきてから監督するのはなかなか厳しい。入り口(参入時)のラインが下がることで安全規制を守れない事業者が入ってくることに問題がある」と参入基準強化を求め、運送事業を経営した経験を持つ室井政務官は「免許から許可に緩和されて重みがなくなり、運送事業者の安全に対する心構えもなっていない」と嘆いた。
 同省の中田局長は24日の会見で、事後チェックの強化とともに、参入時の基準強化と審査強化も検討していく考えを示した。バス事業で先行的に検討するが、トラックとタクシーについても同様の考え方で規制を強化していく考えだ。
 トラックでは、将来ビジョン検討会ワーキンググループで法令試験の強化がメニューの1つとなっている。現在は落とすことを目的としない試験だが、法令試験の内容をより厳格化し、不合格の者は一定期間後でなければ再受験できないようにするなど、事業許可にもっと「重み」を持たせるべきではないか。

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