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日本流通新聞7月9日付紙面から

社説:更新制は慎重に議論を

 国土交通省に設置されたトラック産業将来ビジョン検討会のワーキンググループ(WG)がようやく再開されるようだ。
 昨年12月27日の前回会合から約7ヵ月ぶりとなる第6回会合では、検討の方向性が改めて示される見通しだ。
 4月の高速ツアーバス事故を受けて、与党内で「行き過ぎた規制緩和の見直し」を求める声が高まる中で、参入規制の強化や事後チェックの強化、さらには事後チェック強化の一方策としての事業許可更新制などが焦点になるという。
 ただ、参入規制のうち、ワーキングでのメインテーマともなった最低車両台数基準については、昨年末の会合でも賛否両意見があったほか、トラック業界内の意見も「引き上げるべき」、「既存事業者も引き上げなければならないなら、引き上げるべきではない」、「引き上げるべきではない」と3つに分かれているという。このため、引き上げるべきとの結論には至らない見込みだ。
 参入規制としてはこのほか、法令試験の強化、安全管理体制の強化が方向性として示されそうだ。
 悪質な事業者の排除の仕組みとしては、事後チェックと事業許可更新制が焦点となる。国の監査は全国320人体制により、バス、タクシー含め12万社をチェックしているのが実態で、このマンパワー不足を補うのが更新制との位置づけだ。
 ただ、更新制については、前回のワーキングで「不適正事業者が排除されることで運賃水準が上がり、問題解決に向かう」と肯定的な意見がある一方、「適正事業者にも負担がかかるほか、更新時期を迎えた事業者が金融機関から融資を受けにくくなる懸念がある」との反対意見も出されている。
 一方、高速ツアーバス事故を受けて民主党の合同部門会議がまとめた提言では、バス事業の参入規制のあり方や事業許可更新制の導入など法改正を含めて検討する方針が打ち出され、改めて更新制が注目されている。
 また、タクシーの需給調整復活をめざす民主党の議員立法でも、許可を免許に強化したうえで更新制を導入することが検討されている。
 更新制を導入する際には、優良な事業者への負担軽減、事業者の立場が不安定となることへの配慮、更新手続きにかかる行政のマンパワーなどの課題解決が不可欠だ。国交省では事後チェックのための有力なツールと位置づけ、導入に向け検討を続ける構えを見せているが、多くの課題や懸念がある以上、慎重に議論を重ねる必要がある。

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