社説:多様なエネルギー確保を
環境省と国土交通省が連携して、来年度から物流の低炭素化に取り組む。環境省所管のエネルギー対策特別会計による事業で、環境省が来年度概算要求で30億円を要求する。
事業メニューの中心となるのが中距離幹線輸送分野での大型CNGトラック導入だ。東京〜大阪などの幹線貨物輸送に、一定台数以上の大型CNGトラックを導入し、起終点に大型車用スタンドを配置する事業に対し、スタンド整備費とトラック購入費の2分の1を補助する。
国交省のCNGトラック導入補助が、「通常車両との差額」の2分の1補助であることを考えると、かなり手厚い補助だ。
乗用車の分野では、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)が環境対応車として脚光を浴びているが、トラック分野ではCNG車が主役だ。とりわけ大型トラック分野ではこれまでディーゼル車に代替しうる低公害車がなく、トラック事業者が環境対策に寄与する機会が限定されていた。
大型CNGトラックは、国交省の次世代低公害車開発事業の1つとして2002年度から開発が始まり、2007年度から2年間行われた実証走行試験では、東京〜大阪間約600km弱を途中無充填で走行可能であることが実証された。
一方、日本ガス協会は昨年12月からトラック事業者15社の協力を得て、大型CNGトラック3台での実証試験を開始した。環境省と国交省の連携事業では、こうした取り組みを制度的に支援する狙いがある。
米国のシェールガス革命により、非在来型ガスの生産が拡大しており、天然ガスは世界的に今最も注目を集めているエネルギーだ。自動車用エネルギーとしても期待されており、世界では年間100万台を超えるペースでCNG車が増加。今年に入り1500万台を突破した。
一方、国内に目を転じると車両数は4万台超にとどまっており、CNGスタンドはSSそのものの減少もあってここ数年減少傾向にある。さらに追い打ちをかけるように経済産業省によるスタンド整備補助が打ち切られ、普及にブレーキがかかるのではと懸念されていた。
営業用トラックは燃料の99.4%を軽油に依存しており、中東情勢などの地政学的リスクを常に抱えている。また、東日本大震災では、製油所やタンクローリーも被災してガソリン不足に陥ったが、被災地の天然ガススタンドは早期に営業を再開できた。こうした営業用トラックのエネルギーセキュリティも考慮し、軽油だけに依存しない多様なエネルギーを確保しておく必要がある。