社説:会社全体の安全意識高揚を
秋の全国交通安全運動が21日から始まる。「子どもと高齢者の交通事故防止」が運動の基本だという。登下校中の児童らの列に車が突っ込むという痛ましい事故が相次いでおり、通学路などでの安全運転を呼びかける。
今年は4月に関越道で高速ツアーバスによる事故が起き、乗客7人が死亡、38人が重軽傷を負うという大惨事となった。事故をきっかけに、国土交通省は安全対策強化に舵を切り、過労運転防止、運行管理のあり方、監査の強化、行政処分の厳格化などの検討に着手した。
貸切バス事業は、トラック運送事業と業態が酷似しており、こうした対策強化の流れがトラックに波及することは必至だ。
過労運転防止対策検討会では、6月に高速ツアーバスの緊急対策を打ち出し、高速ツアーバスの交替運転者配置基準を強化した。今後は運行管理者制度など安全基準の強化を検討していく予定だ。
監査については、監査のあり方検討会が検討を開始しており、効率的な監査方法や監査体制強化とともに、悪質な運送事業者に対する行政処分の厳格化を検討中だ。監査や処分についてはトラックにも適用していく予定だ。
一方、営業用トラックが第一当事者となった死亡事故件数が前年より増加している。今年上半期の死亡事故件数は172件となり、前年同期の153件より12%増えている。7月末時点での比較でも前年同期に177件だったものが今年は196件となお11%増だ。
こうした事態を受けて全日本トラック協会は7月から、2012年下期交通事故防止緊急特別対策を実施し、追突事故の防止、トレーラの事故防止、交差点の事故防止を重点に改めて事故防止への取り組みを強めている。
国土交通省も全日本トラック協会に対し、事故防止の徹底を文書で要請し、同省が策定したトラック追突事故防止マニュアルや運転者指導監督マニュアルの活用を促した。
営業用トラックの事故の約半数が追突事故だ。自動車全体の追突事故に比べ、発生率は約3倍で、損失額は約1.6倍となる。とくに、午前2時〜同6時の深夜早朝時間帯の追突死亡事故が多いという。
午前2時〜4時の間は「魔の時間帯」といわれ、眠くなって事故が起きやすくなることが生理学的な検討で明らかになっている。
事故を減らすためには地道な努力が必要だ。そのためには経営トップが先頭に立って会社全体の安全意識を高める必要がある。