社説:「更新制」がキーワードに
国土交通省が自動車運送事業の運行管理者資格に更新制の導入を検討している。4月の高速ツアーバス事故を受けた安全対策強化の一環で、随時改正される関係法令について最新の知識を持ってもらうため、一定期間ごとに講習の受講を義務付け、受講しない場合には資格を更新できないという仕組みだ。
運行管理者には、元々2年に1度の講習受講が義務付けられているが、受講していないケースも見られ、監査に入らないと受講の有無が確認できないのが実情だ。このため、講習を確実に受講してもらおうと更新制を検討しているものだが、この件を議論しているバス事業のあり方検討会では異論も出ているという。
更新制は、自動車運送事業の規制緩和見直しのなかで半ばキーワードになっている感がある。タクシー事業で、議員立法により事業許可制を免許制に強化したうえで更新制を導入する案が検討されているほか、バス事業でも、事故を受けて民主党が6月にまとめた提言で「参入規制のあり方や事業許可更新制導入など、法改正を含めて検討する」とされていた。
トラック事業でも事業許可更新制が取り沙汰されている。トラックについては、先日将来ビジョン検討会の最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループが報告書をまとめたが、最低車両台数の引き上げは見送られ、緊急調整措置や標準運賃も発動困難と結論づけられるなど、期待された成果は上がらなかった。
このため、新たな作業部会を設置して、引き続き対応策を検討していくことになったものだ。作業部会では、参入基準の厳格化と許可更新制を検討するが、更新制には業界内でも「優良な事業者にも負担を強いる」などと賛否両論があり、今後の議論の成り行きが注目されている。
更新制に異論が出やすいのは、制度設計によっては事業者への負担、影響が大きくなると考えられるからだ。導入するのであれば、本当に悪質な事業者だけが更新できない仕組みとし、善良な事業者は自動更新とするなどメリハリのついた制度とすべきではないか。その意味では、具体的ないくつかの制度設計案を提示して議論する必要がある。
運行管理者資格の更新制も、具体的な制度案が必要だ。再度試験を受験させるような厳しい更新制では異論も出るだろう。講習の受講であれば、真面目な事業者、運行管理者には負担とならないのではないか。また、優良な運行管理者にはインセンティブとなるような制度も一考に値しよう。