社説:有効活用できる高速道料金に
国土交通相の諮問機関である社会資本整備審議会が4年ぶりに高速道路料金の審議を開始した。
高速道路の通行料金割引は、道路公団が民営化した際、民営化によるコスト縮減などにより通勤割引、深夜割引などの時間帯割引が創設された。その際、ハイウェイカードによる前払い割引はマイレージ割引に移行し、別納割引制度は大口・多頻度割引制度へと移行した。これが2005年のことだ。
その後自民党政権下の2008年の景気対策により、高速道路の債務の一部を国が肩代わりするかたちで財源を捻出し、深夜割引を3割引から5割引に拡充したほか、翌09年からは乗用車の休日1000円がスタートした。この頃から料金割引は政治主導で決定されてきた。
2009年夏の政権交代で民主党政権となると、高速道路の料金政策は二転三転することになる。2010年4月には当時の前原国交相が大型車5000円などの上限料金制導入と大口・多頻度割引廃止を打ち出したが、トラック運送業界が「実質値上げになる」などとして反発し廃案となった。政府と民主党は再度話し合い、トラックについては上限制を導入せず、大口・多頻度割引も存続することになった。
2011年の東日本大震災発生も料金政策に影響を与えた。政府は高速道路無料化社会実験を中止し、乗用車の休日1000円も廃止して財源を被災地の復旧・復興に充てた。
2008年に創設された利便増進事業では、3兆円を2017年度までの10年間で使う予定だったが、2年間限定のはずだった休日1000円などを継続したことや一部を復興財源に充当したことにより、2013年度までの5年間で使い切ることになった。
社会資本整備審議会に設置された国土幹線道路部会では、割引制度の見直しのほか、本四高速の料金を引き下げるため、全国共通水準の料金とすることなどを検討する。
本四の債務とNEXCOの債務を統合することなどが一案だが、NEXCOユーザーにとっては値上げ要因となるため、現行割引の維持を含めて値上げを回避するためには新たな財源が必要となる。
償還期間を延長して財源を捻出する方法も考えられるが、民営化の枠組みを壊すことになるほか、将来世代に負担を先送りすることにもなるため、異論も出そうだ。
トラック運送事業者を含む自動車ユーザーは、合計9種類計8兆円もの税負担を課せられている。何とか新たな財源確保に知恵を絞り、高速道路が有効に活用される料金制度とすべきだ。